「宗像明将の現場批評〜Particular Sight Seeing」第26回 おやすみホログラム『2』
おやすみホログラム、いよいよリキッドの舞台へーー新機軸も飛び出した“奇祭”を振り返る
おやすみホログラムによる奇祭が終わった。それは、2016年6月15日に渋谷TSUTAYA O-WESTで開催されたおやすみホログラムのセカンドワンマンライブ『2』のことだ。
しかし、現在のアイドルシーンの中で「汚ったねぇ現場」としてその名を轟かせてきたおやすみホログラムにしては、メンバーのダイブは少なかったぐらいだ。特に、おやすみホログラムのカナミルがいつも行う、フロアへの容赦のないダイブは、「おやすみホログラムの現場で一番ひどいピンチケはカナミル」と言われるほどであることを考えると、本当に少なかったほどである。言い換えると、完全にバンド編成をメインとした音楽で勝負したステージだった。そして、それでふだんのライブに何ら見劣りするところはなかったのだ。
おやすみホログラムにはいくつかの編成がある。まず、普通のアイドルのようにオケだけを使い、メンバーのカナミルと八月ちゃんが歌うスタイル。そして、プロデューサーのオガワコウイチのアコースティック・ギターだけを伴奏にして歌うアコースティック編成。また、ジャズ畑のミュージシャンを中心にした「OYSMAJE(おやすみホログラム・オルタナティヴ・ジャズ・アンサンブル)」もある。最後がバンド編成の「おやすみホログラムバンド」だ。
チケットがソールドアウトしたこの日のライブでは、最初の3曲がオケだった以外は、すべておやすみホログラムバンドによる演奏だった。そして、現在の編成としてはおやすみホログラムバンド最後のライブになることも事前に告知されていた。バンドは、ギターのオガワコウイチ、サックスの福山タク(NATURE DANGER GANG)、ギターのハシダカズマ(箱庭の室内楽)、ギターの上野翔(箱庭の室内楽)、ベースの小林樹音(THE DHOLE)、ヴァイオリンとキーボードの百瀬巡、ドラムの高石晃太郎、そしておやすみホログラムのカナミルと八月ちゃんという9人。大編成である。バンドが現れたとき「ギターが多い!」という声が会場から起きていたが、ギターが3人もいるのに、サックスとヴァイオリンもいるのでギター・バンドにはならないという特殊な編成だ。
おやすみホログラムのセカンド・アルバム『2』は、前知識なしに聴いたらアイドルではなくオルタナのアルバムにしか聴こえないが、このバンドはそれを見事に再現する編成でもあった。おやすみホログラムとしては大胆なほどアコースティック・サイドを封印したライブであったとも言える。
会場に着くと入場列が非常に長かったので、これは開演が遅れるな……と考えていたものの、ライヴは定刻通りスタート。1曲目は前夜MVが公開されたばかりの「too young」。それが鳴り始めると、昼間からTSUTAYA O-WESTの前で酒を飲んでいたヲタたちが用意した巨大な風船たちが会場に投げ入れられた。
その一方で、この日のオケによるパートでは新たな振り付けがあった。フリースタイルの塊のようだった最近のおやすみホログラムとしては新鮮な光景だ。そのダンスが、フロアからステージに乗りあげた巨大な風船に押されてしまい、スタッフが風船を片付ける一幕も。2曲目の「note」では早くもフロアが荒れ狂い、風船が破裂する音も響いていた。地獄かよ。3曲目は冷ややかな打ち込みのトラックが心地いい「ニューロマンサー」。ここまでがオケによるパートだった。
そして、バンドメンバーが登場すると、百瀬巡への熱い「百瀬」コールと大歓声が起きていた。おやすみホログラムがいるだろ……!