欅坂46が提示する、ポスト「アイドル戦国時代」の戦い方 乃木坂46とも異なるグループ戦略を読む

 「アイドル戦国時代」と言われるようになって久しいが、今やその動乱はすっかり治まったように見える。00年代以降のアイドルブームを作り上げたAKB48は10周年を迎え、総監督として結成当初よりグループを支えてきた高橋みなみは卒業、大島優子、宮澤佐江といった実力者揃いの2期生も全員グループを去った。以前は「初武道館公演」を目標とし、達成するまでの物語を描くアイドルが多く存在したが、2016年3月までに、実際に初の武道館公演を予定しているグループは発表されていないことからも、業界の盛り上がりがある意味で落ち着いてしまっていることが見て取れる。また、「初武道館以後」で伸び悩むアイドルも散見される。そこから東名阪アリーナツアーやドーム公演にステップアップできないこともあれば、アニバーサリー感の強い初武道館に比べて2度目、3度目の武道館公演で集客を落とすことも少なくない。そんな「ポスト・アイドル戦国時代」に挑むのが、4月6日にデビューシングル「サイレントマジョリティー」をリリースした欅坂46だ。

「サイレントマジョリティー」の魅力と乃木坂46との差別化

乃木坂46 『ぐるぐるカーテン』Short Ver.

 乃木坂46に続く“坂道シリーズ”第2弾として結成された欅坂46。2グループの差別化がどう行われるかと、結成当初から注目を集めていたが、このデビューシングルが明確にその方向性を示している。乃木坂46は清楚で上品な世界観を打ち出し、1stシングル「ぐるぐるカーテン」では、男子が想像する理想の女子の花園をフレンチポップにのせて表現。振付は可愛らしく、「ダンスというよりも舞踊のようだ」とも形容された。総合プロデューサーの秋元康は、まだ未完成ながら、みずみずしい魅力を持つ彼女たちをシンプルに調理し、素材を活かしてみせた。

 一方の欅坂46はどうか。1stシングルの衣装はイメージカラーの緑を踏襲しつつも、学生の制服というよりも軍服に近いデザインで、表情も笑顔ではなく、真剣な眼差しで彼方を見つめるというビジュアルイメージに仕上がっている。乃木坂46の初々しい可愛らしさとは別のベクトルへと進んでいることは明らかだ。その差異は『ぐるぐるカーテン』と『サイレントマジョリティー』のジャケットにも顕著で、乃木坂46は制服姿で窓際にて戯れる彼女たちの可愛らしさが白を基調に押し出されているが、渋谷川で撮影された欅坂46のジャケットのメンバーは大都会の陰に立つかのようで、その姿は“戦場に立つ少女たち”というイメージを想起させる。

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