まなみのりさ5thワンマンライブレポート なぜ特別な意味を持つイベントとなったか?

 

異変

 昨年8月に開催が告知されたから、ファンは半年以上もこの日を待っていた勘定で、開演前だというのに、BGMに流れていた彼女たちの楽曲に気もそぞろに気炎を上げているわ、名物の「ポラリスサークル」を組んでぐるぐる回っているわという騒ぎだ。

 ステージを覆っていた白いスクリーンにこのワンマンまでのカウントダウン映像が映し出される。それが終わるとメンバー紹介のVTRが流れ、そして「We Will Show You the Results.」というメッセージ。幕が上がって、円形に陣取った、まなみ、みのり、りさの姿が浮かび上がった。

 歌い出されたのは「逆襲のポラリス」のサビ。アカペラである。そして「ポラリス Episode ZERO」へ。

 

 まなみのりさには「ポラリス」をタイトルに持つ楽曲が5つある。発表順に並べると、「ポラリス」「ポラリスB」「ポラリスAb」「ポラリス Episode ZERO」「逆襲のポラリス」の5曲だ。「Episode ZERO」は3人が出逢う前日譚という設定の曲である。グループの代名詞となっているだけあって、どれも甲乙つけがたい良曲で、会場は早々にぶち上がっている。

 話が前後するが、中盤の幕間で、みのりのナレーションで「ポラリス」について解説する映像が上映された。ポラリスはむろん北極星だが、実は3つの星から成る連星であり、それぞれの名称が「ポラリスA」「ポラリスB」「ポラリスAb」なのだ。ここから楽曲タイトルが採られているわけだが、同時に、まなみのりさの3人の所縁が重ね合わされてもいるのである。

 北極星を含むこぐま座の学名は奇縁にも「ウルサエ・ミノリス」というそうで、「どうせなら「カワイイ・ミノリス」がよかったなあ。わら」というみのりのナレーションにファンは大喜びしていた。

 最初の「ポラリス」は2010年に発表された5thシングルで、これ以降、まなみのりさの楽曲はすべてtetsuhikoがプロデュース・作詞・作曲を手掛けている。tetsuhikoは彼女たちの所属事務所であるアイアンクリエイティヴの社長であり、作家として他アーティストに楽曲提供もしている。自身もユニットを結成しており、シンガーソングライターとして活動していた過去も持っている。

「ポラリス Episode ZERO」に続けて「どうしよ!?」「花魁サンダー」と2曲歌い終え、「皆さん、こんばんわー!」と挨拶のMCへ。

 どの時点で異変に気づいたか。

 ファンそれぞれだろうが、この最初のMCまでは大きな異常はないように見えた。MCが明けて歌われた「キライじゃないのぉ」で不審に思った人が多かっただろうか。「惚れてしまいました」「オレモー!」というコール&レスポンスが印象的な曲だが、何か違和感がある。

 

 どうもまなみが歌っていないようなのだ。

 続く「WALKING MERMAID」「BLISTER」でも歌唱の割り振りが変えられており、みのりとりさがまなみのパートを分担している様子だった。この状態は、程度の差はあったものの、終演まで変わらなかった。

 まなみの喉に不調があることが知らされたのは、ようやくアンコールでのことだった。

 アンコール1曲目は「Home Again ~愛のみそ汁~」。まなみの歌唱がメインの曲だ。苦しさを押して歌い終えたあと、まなみ自身の口から「二人にサポートしてもらいながらになってごめんなさい」と、声が出ないことの告白と謝罪がなされた。

「この貸しはでかいぞ」とみのりが軽口で場を和ませていたけれど、「結果を出す」と宣言をし、満を持して迎えた特別なワンマンで起こった事故だっただけに、メンバーやスタッフはもちろん、ファンにとってもクリティカルなライブになってしまった印象は否めなかった。

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