Silent Sirenのライブはなぜ「楽しい」のか “覚悟”と“挑戦”のステージから魅力を読み解く
“ロックバンド”という概念にとらわれない姿勢
「サイサイのライブは楽しい」──ファンの多くが持つ感想だ。「カッコよかった」「素晴らしかった」漠然とした言葉であるが、そういった感想を持つライブは多い。だが、それらを含めて「楽しかった」という言葉に集約できるバンドはそうそう居ないと思う。自由な発想と自由すぎるトーク、ちょいちょい挟み込んでくる小ネタ、でもキメるところはバチっとキメてくる……それがサイサイの魅力でもあり、「ロックバンドはこうあるべき」といった固定観念にとらわれていないからこそ生まれる面白さであるだろう。
「売れたい」「有名になりたい」と口にすることが、どこかカッコ悪いとされるロックシーンの中で、上を目指すことをきっぱりと公言する、貪欲な姿勢を持つ珍しいバンドでもある。「読モ出身」という出自がゆえに誤解や偏見も持たれてきたが、逆にその偏見すらも武器にしてきた。「ロックバンドである」ことを、音でしっかりと主張しつつも、決して斜に構えることはない。キュートなビジュアルイメージを活かすことはもちろん、先日DVD化されたテレ朝動画『サイサイてれび!~おちゃの娘サイサイ~』などで見せるバラエティの側面しかりだ。サブタイトルにもなっている〈私たちガールズバンドですが…〉といった身体を張った企画に挑む姿も、お笑い芸人たちと対等に絡んでいく姿も、もはや“芸風”といえる域にまで達している。音楽と、可愛さと、お笑いまでも網羅し、かといって散漫にならずにどれも徹底的に追求し、自分たちの武器にしているのだ。サイサイの目指す「国民的ガールズバンド」とは、単にセールスや動員という表面的なものでないことは、「2016年もいい意味でみんなの期待を裏切るようなバンドでいきます」というひなんちゅの言葉にも表れているように思う。
2016年、Silent Sirenの新たな「挑戦」がはじまろうとしている。自信作と語るニューアルバム『S』、ツアー、そして、ちょうど7月にリニューアルオープンする横浜アリーナでの公演……この自由奔放なガールズバンドは我々を思いっきり“裏切ってくる”に違いない。
(写真=駒井夕香)
■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ/twitter