パスピエ、“区切り”にして“スタート”の武道館ライブ バンドの多面性を再提示した一夜をレポート
ここで大胡田がステージから一旦退き、成田、やおたくや(Dr)、露崎義邦(Ba)、三澤の4人によるセッションタイムがスタート。成田によるクラシカルな演奏から始まったセッションは、次第にプログレッシブなアンサンブルへと変化し、演奏技術の高さを誇示した。その後、大胡田がダンサー2人を連れて再度ステージへと現れると、最新アルバム『娑婆ラバ』の超重要楽曲でもある「つくり囃子」をダンサーとともに披露。「術中ハック」では三澤のWネックギターによるソロ演奏に、客席が大きく沸いた。
その後パスピエは、ライブの定番曲である「とおりゃんせ」を披露すると、三角オブジェの中には銅鑼が登場。大胡田はこれを思いきり叩き「チャイナタウン」がスタートした。15曲目に「フィーバー」を演奏したあとの「脳内戦争」では、成田がショルダーキーボードを背負ってステージを駆け巡るという珍しい光景も見ることができた。その後のMCで、大胡田から「成田さんが全力で走り回るのは貴重です」と話を振られた成田は「後にも先にもこれっきりです(笑)」とコメント。続けて成田は「ずっと見てくれてた人も、初めて来てくれた人も、みんなに支えられてここまできた。このメンバーでステージに立てて良かった」と喜びを噛みしめ、大胡田も「いつも歌詞で小難しい言葉を使っている私が言うのもあれなんですけど……胸がいっぱいで言葉が出てこないです! 喋るの得意じゃないから、お歌で伝えさせてください」と語り、『娑婆ラバ』の1曲目を飾るストレートなポップソング「手加減のない未来」へ。同曲が持つスケール感は、武道館の舞台にも良く映えるだろうと思っていたが、実際に演奏を聴くと、さらに広い場所で響くことが容易に想像できるほど、バンドのポテンシャルが上がっていることにも気づかされた。
「ワールドエンド」「シネマ」と、練り直された『演出家出演』の楽曲が続いたあとは、レーザーや金テープが乱れ飛ぶ「MATATABISTEP」、バンドを一つ上のステージに押し上げたシングル曲「トキノワ」とライブは展開。本編は大胡田が「私たちパスピエにとって、本当に大事な曲です」と前置きし、成田と大胡田が共作詞を手掛けた「素顔」で幕を閉じた。
アンコールでは、成田が「2015年はアルバムのリリースとツアーからの武道館という二つの大きな山があった。今回の武道館は区切りでもあるけど、スタートだと思っていて。2016年のパスピエもよろしくお願いします!」と観客に語り、大胡田の掛け声とともに「S.S.」がスタート。最後は大胡田が「また必ずお会いしましょう!」と叫び、バンド初期からのラストナンバー「最終電車」で、初の武道館公演は終了した。
バンドが新たな地平へと踏み出したアルバム『娑婆ラバ』とともに駆け抜けた2015年を、最高の形で締めくくったパスピエ。引き続きその動きを注視していきたい。
(取材・文=中村拓海/撮影=鳥居洋介)
■セットリスト
1.電波ジャック
2.トロイメライ
3.贅沢ないいわけ
4.YES/NO
5.裏の裏
-MC-
6.トーキョーシティ・アンダーグラウンド
7.蜘蛛の糸
8.名前のない鳥
9.花
10.Session 武道館
11.つくり囃子
12.術中ハック
13.とおりゃんせ
14.チャイナタウン
15.フィーバー
16.脳内戦争
-MC-
17.手加減のない未来
18.ワールドエンド
19.シネマ
20.MATATABISTEP
21.トキノワ
22.素顔
-アンコールー
EN1. S.S
EN2. 最終電車