特別企画2:ふくりゅうが解説する、globeの画期性

globe20周年BEST盤を100倍楽しむ方法  オルタナティヴなサウンド、閉塞感を描いた歌詞の魅力に迫る

 globeといえば、大ヒットした8thシングル「FACE」も忘れられない。もちろん本作『#globe20th -SPECIAL COVER BEST』にも収録されている。130万枚以上セールスしたヒット曲ではあるが、当時スタジオにこもりっぱなしだった小室哲哉は、本作でオルタナティヴなサウンドに乗せて女性の内面を描いた歌詞世界へと踏み込んでいる。軽々しくJ-POPと一言では括れない、人間を濃密に描いている様に魅力を感じるのだ。

 1997年、リリース当時のglobeの人気はピークを迎えようとしていた。今でいうEXILEのようなビッグな存在感だったかもしれない。しかし、そんな好調期にリリースされたとは思えない「FACE」における小室哲哉によるディープな歌詞の魅力に注目したい。テーマは、ヴォーカリストであるKEIKOをイメージしたであろう20代のOLの葛藤を描いている。大人の女性が仕事や日常生活がうまくいかないことの悩み。将来への不安。そして、過ぎ去りつつある青春への焦りと向き合うことから生まれた、哲学的な言葉のセレクトが絶妙なのだ。

 「FACE」の歌詞は、“太陽がのまれてく”という真夜中の心理描写からはじまる。そして“反省は毎日で 悔やまれることが多すぎて 青春が消えてゆく でも情熱はいつまでつづくの”というフレーズから、自己と向き合っている様が伝わってくる。ストレスを抱えた感情の爆発が炸裂する“少しくらいはきっと役にはたってる でもときどき 自分の生きがいが消えてく 泣いてたり 吠えてたり かみついたりして そんなんばかりが 女じゃない”という言葉が胸を突き刺しつつも、サビである有名フレーズ“鏡に映った あなたと2人 情けないようで たくましくもある 顔と顔を寄せ合い なぐさめあったらそれぞれ 玄関のドアを1人で開けよう”によって、突き抜けたい心情をロックなサウンドとともに共鳴させている。

 いつの時代でも共感を呼ぶであろう心の内面の葛藤を、リアルに冷静に表現したオルタナティヴなロックチューン「FACE」は、時代に残るヒット曲として記録されている。しかし、小室哲哉が描いた歌詞の真意は伝わっているだろうか? 大ヒットという現象によって誤解されてはいないだろうか? globeファンのなかには90年代当時、学生だったリスナーも多いことだろう。あらためて“実は大人なglobeの歌詞世界”と向き合ってみて欲しい。もちろん「FACE」以外の曲でもだ。いま聴いても、そのサウンドや歌詞は古くは聴こえないはずだ。

 すぐれた音楽は、時代を超えられるタイムマシンのような存在だと思う。本作を聴きこめば、自らの琴線に触れる宝物のようなフレーズと出会えることだろう。globe 20周年、いまこそ楽曲の価値と向き合い、正当に再評価してみたい。

(文=ふくりゅう(音楽コンシェルジュ/Twitter))

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