特別企画2:ふくりゅうが解説する、globeの画期性

globe20周年BEST盤を100倍楽しむ方法  オルタナティヴなサウンド、閉塞感を描いた歌詞の魅力に迫る

 

 globeの結成を振り返ってみよう。TM NETWORKとして80年代を席巻した小室哲哉が、1994年のTMNプロジェクト終了後に、篠原涼子 〜 trf 〜 hitomi 〜 H Jungle with t 〜 安室奈美恵 〜などのプロデュース・ヒットによって小室ファミリー・ブームが起きたことが出発点だった。1995年、大阪万博記念公園と東京ベイサイドスクエアで行われた小室哲哉オーガナイズによる大規模な夏フェス『avex dance Matrix '95 TK DANCE CAMP』にて、はじめてお披露目されたのがglobeだ。小室ファミリーの集大成といえる鮮烈な登場がいまも忘れられない。

 小室哲哉はglobeの立ち上げをこう語っている。「テーマは“実社会を切り取るカッコいい音楽”。月刊誌みたいな感覚というか、時代を音楽で解説するような感じでした。trfはブームを作る存在だったけど、globeはブームになっていることを記録していくグループというイメージ」(『小室哲哉ぴあ globe編』より)。このことからglobeのポジショニングの特異さ、他プロデュース作品との差別化が伝わってくるだろう。

 1996年にリリースした1stアルバム『globe』は、ユニット・スタイルとして洋楽アーティストである2 アンリミテッドやブラック・ボックスなどを意識したヒット曲を多数収録し、結果400万枚を売り上げた。初代小室ファミリー・アーティストとして先んじてブレイクしたtrfによる、ダンスミュージックにカラオケ的な要素を掛け合わせ一般化したTKサウンドという方法論を、globeではさらに押し進めたのである。

 しかし、1997年にリリースした2ndアルバム『FACES PLACES』では、私的なメッセージ性を強く感じさせるロックスタイルの作品へとシフトチェンジしている。メンバーのKEIKOやMARCがオルタナティヴ・ロック好きだったことも理由のひとつだが、小室哲哉は、別ユニットTM NETWORKでも見られるように、ダンスミュージックに振り切った後は自身のルーツであるプログレッシヴ・ロック的なロック・テイスト作品に戻ることが多い。そして、そのギャップが大きければ大きいほど、傑作が生まれている。

 “One more time ゲームやらせて 今度は私にカード切らせて あなたは甘やかしてはくれない いつも ジョークでも 嫌いって言いたくはない”

 本作『#globe20th -SPECIAL COVER BEST』にも収録された9thシングル「FACES PLACES」の歌い出しからは、新たな一歩を踏み出す決意表明のような熱意を感じられる。そして、謎掛けのように1970、1981、1984、1994、1997という年号が歌詞でつむがれていく。その答えは、小室自身の音楽人生に由来すると言われている。

 そんなヒストリカルな年号キーワードと恋愛を掛け合わせ、年代ごとにサビが激しさを増し、ハイトーン・フレーズが爆裂するロックチューンに仕上げられた名曲「FACES PLACES」。最高の人生=“BEST OF MY LIFE”の追求とは何なのかという究極の問いを、KEIKOによる高音ヴォイスで極限まで高め、追い求めていく。しかし、楽曲のラストではアコースティック・アレンジによって、“I'm still, I'm still, I'm still……”とせつせつと歌われていく様からは、青春の終わり、諸行無常のせつなさが感じられる。小室ファミリー作品の大ヒットによって90年代音楽シーンのトップを走っていた小室哲哉の心象風景が表れていたのかもしれない。

 「FACES PLACES」とともに、10thシングルとしてリリースしたハードなロックチューン「Anytime smokin' cigarette」にも注目して欲しい。小室サウンド=ピコピコした打ち込みやダンス・ミュージックというイメージを持つリスナーには、女性が抱える閉塞感から生まれた“怒り”を表現したヒリヒリとした世界観に驚きを覚えるはずだ。

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