13thアルバム『BLOOD』リリースインタビュー

→Pia-no-jaC←が明かす、欧州ツアーで得た新たな音楽ビジョン「やっと遊べるようになってきた」

 

今までで一番“踊れる”アルバム

──今作の印象として、今までとは違うところがあって。これまでの作品ではエンタテインメントに特化した要素を強く打ち出していたと思うんです。もちろん今作にもそういう要素は感じられますが、さらに1つ上のステージを目指すというか、音楽というものに真剣に打ち込んでいる感じがどんどん強まっている印象を受けました。

HAYATO:それはあると思います。ヨーロッパの人たちはパフォーマンスがなくて音をじっくり聴いてくれるということが一番大きな発見だったので、だったらその音にはちゃんとこだわりたいなというのもありましたし。今年のイタリアツアー中も新しいメロディができたら樫原さんに送ったりと、やり取りを重ねて完成させていきました。

──「BLUE BLOOD BOOGIE」なんて、これまでだったらもっとパーティ色の強いアレンジになってたと思うんですけど、今回はただそれだけでは終わらない感じが強いんですよね。

HIRO:もちろんライブで楽しめる仕掛けというのは用意していますが、本当に音でしっかり楽しませるというか。ソロの部分だったらどうやって盛り上がるかなとか、カホンのソロを考えていてもそのリアクションを思い浮かべましたし、踊ったりノれたりする音をとにかく真剣に考えたので。シンプルな音の中にもそういったものを感じてもらえたら嬉しいですね。

HAYATO:この曲も、向こうのフェスのリハでちょっと演奏したんですよ。ワンフレーズだけやったけど、もうみんな理想的なノリで踊ってくれて。ちょうどこの曲を仕上げている時期だったので、それは後々自信になりましたよ。

樫原:たぶんね、今回は今までで一番“踊れる”アルバムだと思うんですよ。

──あ、それは聴いていて確かに思いました。

樫原:今までの→Pia-no-jaC←の曲って、起承転結のはっきりしたものが多かったんだけど、今回は1グルーヴで行く曲がすごく多くて。変化っていうところもあんまり加えず、1グルーヴ、1コード進行でどれだけ展開させていけるかってことを、今回僕から彼らへの課題として提案したんですね。循環コードでグルーヴを変えずにどこまで展開できるのか、今までやってこなかったことなんで。それで完成したのが「Nostalgia」なんですけど。

HAYATO:完全にドライブミュージックやなと。向こうで観た山とか海とかが音に反映されているんで。

去年だったら1グルーヴで演奏しても途中で不安になってた

──その循環コードでどう盛り上げていくかという試みは、このアルバムを聴いたときに感じていて。以前の作品ではもっとプログレッシブな展開があったし、どう1曲の中で山場を作っていくか、その山場にいろんな新しい試みを取り入れてどう構築していくかに挑んでいたと思います。でも今作はある意味シンプルなんだけど、その中にはちゃんと起伏があって、その起伏の作り方も今までとは違った取り組み方をしてるなという印象を受けました。

HAYATO:そこは強く意識しました。循環コードの中でどう盛り上げるかという中に新しいトライがあるわけで、そこを外れると逃げたことになる。なので、そこにヨーロッパで観た景色を重ね合わせて、車で過ぎ去っていく映像をイメージしながらメロディを考えていったんです。

樫原:彼らはスキル的にはこの1年で、1曲を長く演奏することができるようになりましたからね。

HIRO:そうですね。去年のツアー前だったらたぶん、同じような1グルーヴで演奏したら途中で不安になってたと思うんですけど、向こうに行ってアドリブ中でも「あ、もっと長くいけるな。もっと欲しがってくれるな」というのを体感したので、今作ではそこに挑戦心を持ってましたね。だから「もっと変化したほうがいいんじゃないか?」っていう不安よりも、「これ、どれだけいけるかな? どれだけ引っ張れるかな?」っていう好奇心のほうが上回りました。

HAYATO:まだまだですけど、やっと遊べるようになってきたというか。ずっと言われてたので、「逃げるな」と(笑)。その結果、2時間半のつもりのライブが3時間になったこともありましたけど、そのおかげで日本のお客さんも「今日はどんなのが聴けるんだろう?」って楽しみにしてくれてるところもあるのかな。ツアーの後に握手会をしてるんですけど、そこで「今日のアドリブ良かったです」と言われるとすごく嬉しいんですよ。逆に何回もライブに来てくれてる方やったら「あのときのほうが良かったね」と言ってくれるので、「なるほど、ああいうのが好みなんだな」って気付けるし。そういう意味では日本のお客さんもちゃんと音を聴いてくれてることがわかって嬉しいし、じゃあ次はこんなことをやってみようっていう意欲にもつながるし。自由にやることがいい経験になってますね。

──お客さんとしても今までのライブのように一緒に楽しむエンタテインメント性が前提としてありつつ、そこからさらにもう一段上の新しい楽しみ方、もっと深い楽しみ方を知ったというのもあるんでしょうね。と当時に、『BLOOD』で追求してきた音を好きな人も徐々に集まりつつあるでしょうし。

樫原:その両面あるでしょうね。

HAYATO:去年までは「どうやったら面白いのかな?」ってパフォーマンス寄りになってたんですよ、鍵盤を2台立ててみたりして。でも今年は音で勝負というか、こういうアレンジにしたら面白いんじゃないかなって考えることが多くなってましたね。以前がパフォーマンス7割に音3割やとしたら、今は逆転してるんで。

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