欅坂46は独自ブランドをどう作る? 2グループ制発表などから読む
さらに印象的なのは、そのけやき坂46にはオーディション開始前に早くも参加メンバーが誕生していることだ。それが、先述29日の『欅って、書けない?』で初登場した新メンバー・長濱ねるである。番組ではオーディション途中辞退から再度のチャレンジ、活動決定に至るまでをドキュメンタリー的に紹介したが、これは単にファンに向けて新メンバーのプロフィールを紹介するにとどまらない重みを持つ。けやき坂46というひとつのグループ発足と同時に長濱の活動開始、およびけやき坂46への加入が発表されたことで、必然的に長濱はこのグループのアイコン的な存在にならざるをえない。さらにいえば、アンダーグループとしてのけやき坂46のみならず、欅坂46を合わせたグループ全体の中でも長濱はやや例外的な立場を背負うことになるはずだ。欅坂46を含めて、グループの中にここまでフィーチャーされるかたちで物語を帯びて活動するメンバーは他にいないのだから。楽曲リリース等以降に自然に見えてくるであろう適性や文脈とは別の形で、まずはグループ特有の形式と、さしあたりのアイコン的な存在が整えられたのが、現段階での欅坂46の大きな特徴のひとつだろう。
乃木坂46にせよ、欅坂46にせよ、運営側が繰り返し言葉にしてきたのは、はじめからコンセプトありきのグループ作りをするのではなく、メンバーの中にあるものを引き出していくという姿勢だ。それは運営する側が最初から決め打ちできるものではないだけに、先が読めないし時間もかかるかもしれない。しかし、その方針だからこそ結成から4年が経過した現在、乃木坂46はメンバーの個性に合致した豊かなコンテンツを発信できているのだろう。そう考えれば、2グループ制のそれぞれの性格も、長濱の位置づけも、コンセプト的な縛りとして存在するのではなく、あくまでスタートラインに立った時点での形態ということにすぎない。まだはっきりとは表に見えないメンバーたちのカラーに導かれた楽曲などの作品群が、今回発表されたグループ独自の枠組みの上に盛られ、現在とは彩りもグループ内のバランスも大きく見え方を変えた時、欅坂46のブランド作りは本格始動するのだろう。
■香月孝史(Twitter)
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。