「エレクトロ×ラウドロック」の最前線で起きていることは? GARIの新作から分析
また、ボーカルであり、同バンドの作詞・作編曲やプログラミングを担うYOW-ROWの課外活動が、アルバムの内容に反映されている点も興味深い。ここ2年ではBUCK-TICKの『形而上 流星』や『或いはアナーキー』において、数曲でマニピュレート&シンセサイザーを手掛けたり、浅倉大介の『DA METAVERSE M28』にコーラス参加、ポール・ウェラーの息子、ナット・ウェラーのデビュー作でサウンド・プロデュースを行うなど、様々な楽曲に携わっている。それらの活動が『Harmonik / Electrik』から『stereoscope』の間にあったことを踏まえたうえで最新作を聴けば、ポップスとして同アルバムが機能しつつ、YOW-ROWの音楽作家としての振り幅が広がった理由も理解でき、より同作を楽しめることだろう。
GARIは作品ごとに幾度となく形を変えてきたバンドのため、次作以降の方向性がこれで定まったとも考えにくい。だが、時代とバンドの現在地をパッケージングし、毎回予想だにしない音楽性を提示してくれる彼らの存在は、今後もリスナーに高い期待を抱かせるはずだ。
(文=中村拓海)