「エレクトロ×ラウドロック」の最前線で起きていることは? GARIの新作から分析
打ち込みの音楽がリスナーに広く浸透した近年、エレクトロ×ラウドロックという組み合わせも増えてきた。
海外だと2000年代後半に最先端のバンドとして活躍したエンター・シカリやクラクソンズ、ペンデュラムなどの“ニューレイヴ”勢がまさに時代の変革を表していたし、日本でも同時代的にthe telephonesやFear, and Loathing in Las Vegasが現れ、前者はメタル的な要素を、後者はハードコアのエッセンスを加え、次世代のバンドも交えて“ピコリーモ”なるジャンルも確立してみせた。現在はそのジャンルで括られることも少なくなったが、THREE LIGHTS DOWN KINGSやa crowd of rebellionがその系譜上にあるバンドであり、8月リリースのアルバムでは、GARIの最新作『stereoscope』もそこに名を連ねる一枚だ。
もっとも、GARIはthe telephonesやFear, and Loathing in Las Vegasらと同時代的に登場したバンドであるが、当時はどちらかといえば1stフルアルバム『e・go・is・tick』など、ヒップホップマナーを踏襲したミクスチャー・ロックに寄っている印象が強かった。彼らはここから一時的にフランスで活動を行い、そこで手に入れた感覚をもって清涼感のあるエレクトロ・ロックを提示した『Colorful Talk』や、よりエディット感を強化し、レイヴやハウスなどの成分を多めに作り上げた前作『Harmonik / Electrik』を経て、現在のキャリアを確立していった。
そのため、『stereoscope』の軸となるのは大文字の“ダンス・ロック”であるが、そこに細分化された多数のジャンルがミックスされている。アルバム冒頭に配置された、ニューレイヴ風の「SHAKEDOWN」や、トランスに清涼感のあるエモーショナルなメロディーラインを加えた「Serious Drive」、ジャズに近いアプローチのギターとエレクトロサウンドの組み合わせが意表を突く「Dis-KOOL」や、EDM的なドロップをサビに取り入れ、パーティーソングとしてアルバムの中核を担う「Coming Up」など、いずれも“ダンス・ロック”であること以外の共通項は少なく、立体的でバラエティに富んだ一枚に仕上がっているのだ。