『フジロック2015』後半2日間をレポート 邦アクト増加でどう変化したか?

7月26日

[Alexandros]

 この日GREEN STAGEの一番手に登場したのは[Alexandros]。ボーカルの川上洋平は「高校生の時にバイト代を貯めて行こうとしたけど間に合わなくて、そこから『出演者として行くまでは……』と決めていた」とフジロックへの並々ならぬ思いを語り、ライブがスタート。最初は「Boo!」や「Waitress, Waitress!」「Kick&Spin」など、勢いのある演奏が目立ったが、後半では「starrrrrrr」や「Leaving Grapefruits」、「Famous Day」、「ワタリドリ」など、ポップで間口の広い楽曲群を演奏。これが快晴のGREEN STAGEと見事にマッチしていた。最後の楽曲の演奏前、川上は「唯一ずっと憧れていたバンドマンが最後に出る今日、このステージを俺たちで始められて本当に光栄です。(ノエル・ギャラガーが)俺の師匠で良かった」とノエルへのリスペクトの念を述べ、そのまま「Adventure」を披露。バンドの転機となった楽曲とともにステージを後にした。

cero

 時刻は正午を過ぎたころ、WHITE STAGEに上がったのは、『Obscure Ride』ツアーを終えたばかりのcero。「この日のために作ったのか」と思うほどのハマり具合だった「マウンテン・マウンテン」からライブをスタート。続いて「My Lost City」、「Summer Soul」と、新作と過去作からポップな楽曲を次々披露したかと思えば、重厚感のある「Elephant Ghost」で、新作『Obscure Ride』を通じた音楽的進化をはっきりと示してくれた。ボーカルの高城晶平はMCで「長いツアーの最後にフジロックが入って、みんな打ち上げのつもり。だからみなさんも酒を飲んでガンガンやってください!」と語ると、「Orphans」で一度観客をチルアウトさせ、「Contemorary Tokyo Cruise」ではラストサビの前で大合唱が起こった。最後の「Yellow Magus」では各メンバーとサポートを務めるMC.sirafu、あだち麗三郎、厚海義朗、光永渉という手練7人によるテクニカルなセッションが繰り広げられ、観客たちを大いに盛り上げた。

ジョニー・マー

 15時過ぎ、少し涼しさも出てきたGREEN STAGEには、元ザ・スミスのジョニー・マーが登場。バンドメンバーも本人もシャツのボタンを一番上まで止めるモッズなスタイルで現れ、2曲目にはいきなりザ・スミスの「Stop Me If You Think You’ve Heard This One Before」を、4曲目には「Big Mouse Strikes Again」を演奏。ボーカルを務めていたモリッシーにどこか似つつ、ジョニー・マー節も効いた歌声で、ファンが歓喜する楽曲群を歌い上げた。また、ニュー・オーダーのバーナード・サムナーとマーによるグループ・エレクトロニックの「Getting Away With It」や、デペッシュ・モードの「I Fought The Law」カバーなど、レアな選曲で会場を沸かせていた。そして最後はザ・スミスの「How Soon Is Now?」でいま一度大きな歓声を巻き起こした。

椎名林檎

 

 椎名林檎の出番前、ステージには白装束姿の人々が大勢集結しており、なにが起こるのかと観客たちがザワつくなか、純白のワンピース姿に白い日傘で現れた椎名は、いきなり初期の楽曲「丸の内サディスティック」をジャジーにアレンジした英語バージョンを熱唱。その後も「静かなる逆襲」や「罪と罰」など、椎名のソウルフルなボーカルと、名越由貴夫(ギター)や長岡亮介(ギター)、ヒイズミマサユ機(鍵盤)、玉田豊夢(ドラム)といった熟練のミュージシャンの演奏が活きる楽曲を次々に披露した。また、「幸先坂」(真木よう子への提供曲)や「青春の瞬き」(栗山千明への提供曲)、SOIL &“PIMP”SESSIONSとの共作曲「殺し屋危機一髪」や、東京事変の「能動的三分間」などのレア曲も演奏するなど、充実のステージだったほか、「長く短い祭」ではワンピースを脱ぎ捨て、青のレオタード姿になるなど、視覚的にも聴覚的にも楽しませてくれた1時間となった。

ライド

 

 1996年に解散し、昨年再結成を果たしたライドがGREEN STAGEのトリ前に登場。1曲目の「Leave Them All Behind」は、期間限定復活だった2001年を入れても14年ぶりの再結成とは思えない瑞々しさがあり、緊張の面持ちで見守っていたファンたちも思わず顔がほころんでいた。バンドの特徴である轟音も健在で、夜が訪れたGREEN STAGEとノイズギターが抜群の相性を見せていた。なかでも「Dreams Burn Down」がハイライトのひとつで、静寂の空間から一音一音が立ち上がり、徐々に盛り上がっていく音像に対し、観客は長い歓声を送り続けていた。ラストナンバーの「Drive Blind」の最後は、フィードバックの応酬。体感時間にして約3分の轟音で、GREEN STAGEを鮮やかに締めた。

FKA ツイッグス

 

 RIDEのステージを見ていたため、筆者は彼女のステージを途中から見ることになるのだが、FKA ツイッグスはセクシーな赤いドレスを身に纏って歌い踊っており、バックではエレドラを使うパーカッショニストとギタリストの2人が、打ち込みの音に加えて演奏を行い、ミニマルな音像を構築していた。FKA ツイッグスは滑らかなダンスでステージを縦横無尽に動きながら、聖歌を歌うがごとく清らかなボーカリゼーションを聴かせ、彼女の姿を一目見ようと訪れた観客を釘付けにしていたことも記しておく。また、「Two Weeks」ではパーカッショニストに煽られた観客がハンドクラップでステージを盛り上げたり、MCではキュートな声で謝辞を述べるなど、無機質なステージングとは一変、温かなファンとのやりとりも見ることができた。神秘的でクールなWHITE STAGE最後のアーティストの残した爪痕は、想像以上に大きかったのではないだろうか。

ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ

 

 そしてGREEN STAGEのトリ、最後のヘッドライナーであるノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズのステージへ。筆者が訪れたのは「Half the World Away」のタイミングだったが、ほかにも「Digsy’s Dinner」や「Whatever」、「Champagne Supernova」に「Fade Away」など、オアシス時代の楽曲を多く歌唱していたようだ。また、ノエルが「今からThe Masterplanをやるから騒ぐなよ」と語るが、興奮した観客は盛り上がることをやめず、彼から「黙れ! 猿!」と注意されるという一幕があったり、ソロ1stのリードトラックでもあった「AKA… What a Life!」では飛び跳ねるファンの姿が見られた。最後の曲として披露されたのはもちろん「Don’t Look Back in Anger」。観客はイントロが鳴った瞬間に大歓声でこれに応え、サビでは会場全体から合唱が巻き起こった。残念ながらアンコールも、期待されていたジョニー・マーとの共演もなかったが、会場が一体感と充足感を持ったまま、美しく3日間のステージを締めくくったといえるだろう。

 羅列するだけでもいかに邦楽アクトが多かったかがわかる今回のフジロック。動員数は昨年の102,000人に比べて115,000人と、上昇傾向にあったわけだが、来年は節目の20回目となることもあり、さらなる増員も期待できる。今回の結果を踏まえ、次回はどのような形に進化していくのか、1年後を楽しみに待ちたい。

(文=編集部)

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