Apple Music、LINE MUSIC、AWA……小野島大が各サービスの特色を読み解く

Apple Music「洋楽好きやコアな音楽ファン向け」

 Apple Musicの一番の特徴は、サービスを使い込むことによって、よりユーザーの嗜好に合ったコンテンツが提供されるという点だ。各ユーザーに合わせたおすすめ楽曲やプレイリストが表示される「For You」機能や、24時間放送や有名DJを招いて音楽プログラムを届ける「Radio」で「ステーション」と呼ばれる自分の専用ラジオが作成できる機能などにユーザーの嗜好が反映されていくという。

 「洋楽に関しては他の2サービスに比べてかなり手厚いですね。ジャンルによってはかなり深いところ、LINE MUSICとは逆にオルタナティブなロックやクラブ系の楽曲が多くラインナップされているという印象を受けました」

 アーティストの音楽ルーツで構成したApple Music作成のプレイリストや、USの『ローリング・ストーン』誌がキュレーターとなり作成したプレイリスト、「CONNECT」というアーティストやキュレーターがユーザーとつながる新しい音楽コミュニケーションツールが提供されるなど、音楽ファンへ向けたコンテンツを多数揃えている。

 また、Apple Musicは、iTunesを使用できる各機器(iPhone、Mac、Windows PC、iPadなど)で利用することが可能で、iTunesライブラリの曲をあわせて再生できるのはもちろん、Apple Musicから楽曲をダウンロードして「マイミュージック」上でオフラインで聴くこともできる。

 「PCで使えるということが非常に大きいので、私個人としては、Apple Musicを使うことが当面多くなりそうです。しかしAWAやLINE MUSICも秋にはPCで使えるようになると聞いていますし、現状ではスマホはiPhoneしか使えないApple Musicも秋にはAndroid対応になる。勝負はこれからでしょう。

 ただ、Apple Musicは、AWAやLINE MUSICのように低ビットレートのストリーミング配信を選べません。スマホユーザーが屋外などで通常回線を使用してストリーミングを聴き続けると、スマホのデータリミットにすぐ達してしまう危険があります。オフライン再生機能があるとはいえ、音楽のライトユーザー層にとっては、どれだけ良い楽曲を揃えているか、ということと同じくらい、データ量の問題は重要なこととなるでしょう」

今後の展望ーー「それぞれの強みを伸ばすことに期待」

 まず、各社が行う取り組みの中で共通して言えるのは、プレイリストにおいて他社との差別化を図ろうとしている動きである。

 「プレイリストの重要性はどのサービスも十分認識していると思うので、どんどん充実していくと思いますよ。ただ、聴ける楽曲が増えないことには、プレイリストづくりを思うようにできないはず。今後、無料期間が終わる秋、あるいは半年、一年経って、各社どのように楽曲を充実させていくのか、ということも関係してくると思います」

 音楽ストリーミングサービスが日本でなかなか始まらなかったように、サービスが始まった後も、邦楽曲のラインナップの充実が各社課題となることは間違いないだろう。そんな中、成長が見込まれるのはどのサービスだろうか。小野島氏はこう続けた。

 「洋楽を主に聴く人にとっては現状ではApple Musicが有力な選択肢となりそうですが、邦楽はやはり弱い。邦楽に関しては、LINE MUSICが今後充実してくるのではないかと期待しています。ソニー、エイベックスという2大メーカーが資本参加しているのは大きい。そういう意味では、LINE MUSICとApple Musicの伸びが大いに期待できるのでは、と思います。AWAはプレイリストの充実をはかり、ラジオ的な機能に特化していけば、独自の路線を開拓できるのではないでしょうか」

 今後も引き続き、日本の音楽ストリーミングサービスの動向に注目していきたい。

(文=久蔵千恵)

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