海外と日本のバンドの「ドラムの違い」とは? 元アマチュアドラマー兵庫慎司が考える

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 もうすぐフェスのシーズンが始まる。というか、一部ではもう始まっていますね。6月16日現在の段階で、私も既に3つ行きました。JAPAN JAM BEACH、METROCK、TAICO CLUBです。

 で。ご存知のように、洋楽アーティスト主体で邦楽アーティストも出るフェスの代表は、フジ・ロック・フェスティバルとサマーソニックであって、よって現場では洋邦両方観て聴くことになるわけだが、そのたびに毎年思い知ることがある。

 海外のバンドと日本のバンドのライヴ・パフォーマンスにおいて、もっとも違うのはドラムだ、ということだ。

 海外のバンドの方が圧倒的にいいのだ。日本盤も出ていないようなバンドであっても、作品では打ち込みでライヴでのみ生ドラムを入れているようなバンドであっても、ドラムはすごくよかったりするのだ。会場を歩いていて、遠くのステージから知らない曲のイントロがきこえてきた場合、そのドラムの響きだけで日本のバンドか英米のバンドか判断できるほどだ、と言っても過言ではない。

 たとえばBoBoとか、ZAZEN BOYSの松下敦とか、detroit7の山口美代子とか、あらきゆうことか、川西幸一とか湊雅史とか伊藤大地とか古田たかしとか(後半奥田民生関係を並べてみました。しかしつくづくOTっていいドラマーとしかやってないですね)、国内にもすぐれたドラマーは何人もいるが、日本のロック・フェスに呼ばれる海外のバンドの場合、ほとんどのドラマーがそのレベルであると言っても過言ではない。

 いや、過言か。それはさすがに言い過ぎだが、フジやサマソニでよく知らない英米のバンドを観ていて、「知らないバンドだけどドラムはBoBoレベルだよなあ」とか思うことが、実際に私、よくあります。

 そして、これ、「ロックってそもそも英米のものだから、やっぱり英米のミュージシャンのほうがすぐれてるんだよ、リズム感が日本人とは違うんだよ」という理由では、必ずしもないと思うのだ。確かにそれもあるだろうが、それだけではないのではないか。

 なぜか。昔は英米のバンドだからって、必ずしもドラムがいい、というわけではなかったからだ。

 僕が東京に引っ越してロッキング・オン社に入り、川崎クラブチッタや渋谷クラブクアトロで英米のアーティストの来日公演を頻繁に観ることができるようになったのは1991年からなのだが、当時「うわ、このドラムすごい! やっぱ外人は違う!」と思った記憶、正直、そんなにありません。

 というかむしろ、ドラムに限らず演奏においては、全体的に「えっ!? 外人てこんなにしょぼいの?」とびっくりすることの方が多かった。ただ、ロッキング・オンが推していたバンドがそういうのばかりだった、という可能性はあるが。もしBURRN!編集部に入っていたら全然違ったかもしれない。

 ともあれ、当時、ライヴを観て演奏いいなと思った、当時人気のあったバンドは、THE STONE ROSES(これは東京に行く前ですが。大阪で観ました)、HAPPY MONDAYS、THE CHARLTANS、WONDER STUFF、MANO NEGRA、あとその数年後に渋谷クラブクアトロで観たRADIOHEADくらいだ(これはほんとにすごかった)。

 じゃあ当時の日本のバンドはどうだったんだ、ということをスルーするのはよくないか。えーと、はっきり言って、ひどかったです。具体例を出すのは差し障りがありすぎるのでやめますが。僕が高校時代をすごした80年代中期の広島は、今思うとどうもいいアマチュアミュージシャンが多かったらしく(まあ、奥田民生とか川西幸一とか、プロデューサーの島田“CHOKKAKU”直とかが普通にライヴハウスでやってたわけだし)、のちに有名なプロの人気バンドのライヴを観て「ええっ、こんなに演奏ペラペラなの!?」とびっくりすることがたびたびありました。

 今の日本のバンドの演奏技術、よくこんなにも進歩したなあと本当に思う。ONE OK ROCKなんて日本人とは思えない、演奏。若いのに。

 ドラムのよしあしの話から、昔のバンドの演奏はしょぼかった、という話にそれてしまった。戻します。

 つまり、90年代初頭に僕が観た洋楽バンドで、今フジやサマーソニックで観て「ドラムすげえいいなあ」と思うのと同じレベルでよかったのは、THE STONE ROSESのレニくらいだったわけです。あ、レニの後任のロビー・マディックスもよかったです、レニほどではないけど。

 もちろん僕は当時の洋楽アーティストの来日ライヴをすべて網羅していたわけではないし、さっき書いたように当時ロッキング・オンで推していたバンドがそういうのが多かったんだろ、という可能性も大いにあるが。

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