兵庫慎司「ロックの余談Z」 第4回
幸福な解散はある──SAKEROCKのラスト・ライブを観て
幸福な解散。
あるいは、理想的な解散。
というものがあることを、僕はSAKEROCKの解散によって知った。
解散してよかったとか、解散してほしかったという話ではない。そんなわけはない。もちろん悲しいし、残念だし、解散を知った時はショックだった。
ただ、基本的に、バンドというのは解散するものだ。というのは言い過ぎだが、解散せずに活動を続けているバンドよりも、解散する、もしくは活動休止するバンドの方が圧倒的に多い。中には20年30年40年と活動を続けているバンドもいるが、それだっていつかは止まる時が来る。人はいつか死ぬんだから。
って思いっきり極論だが、そのように、解散がバンドにとって不可避的なものであるとするならば、このたびのSAKEROCKの解散は、きわめてめずらしい、幸福な解散であり、理想的な解散だったのではないか、と思うのである。というか、そういうものがあることを教えてくれたのがSAKEROCKの解散だった、とも言える。
バンドが解散する理由はいろいろある。売れなかったから。もしくは、売れてたけど売れなくなったから。仲が悪くなったから。ダメなメンバーがいるから。音楽的支柱になっているメンバー(多くの場合ヴォーカル)が、もうイヤんなっちゃったから。マネージメントともめたから。などなど。
ただ、SAKEROCKの場合、そのどれにもあてはまらない。仲がいいのか悪いのかは知らないが、もし仲が悪かったとしても、それが原因だとしたら、結成15年の今ではなく、とっくの昔に解散していただろう。
そもそも、SAKEROCKの解散の理由は、誰が見ても明らかなように、仲がいいとか悪いとか以前の問題だ。
シンプルに言うと、
個々のメンバーが売れすぎて、スケジュールを合わせるのが物理的に不可能になった。
ということだ。誰かが、ではない。最後に残ったメンバー3人ともだ。3人になってから解散するまでの3人の心情とか、関係性とかは僕は知らない。知らないが、星野 源、浜野謙太、伊藤大地、それぞれの活動を見るに、「で、これ、いつSAKEROCKやるの?」という状態にどんどんなっていったのは、ご存知のとおりだ。
そこで無理矢理スケジュールを合わせることは、星野 源に「ソロやるな!」っていうことになる。ハマケンに「在日ファンクもASA-CHANG&BLUE HATSもタレントも役者も全部禁止!」ってことになる。伊藤大地に「今オファーが来てるドラムの仕事全部断れ!」ということになる。なお僕の場合、ここ1、2年で、ステージ上の姿を最も数多く観ているミュージシャンは彼です。というくらいの仕事量です、今の伊藤大地は。週に2回観ることもめずらしくない、それくらいひっぱりだこです。
あと、3人になった直後、池田貴史や吉田一郎などが参加して9人編成でやったライブ。すごくよかったが、あれも「今後はこの形で精力的に活動していきます! ライブもレコーディングもいっぱいやります!」という形ではないことは明らかだった。よけい難しくなるし、全員揃えるのが。