『Obscure Ride』リリースインタビュー

ceroは日本のポップミュージックをどう変える? 「2015年の街の景色を音楽にすることができた」

「街の昼と夜の風景、表通りと裏通りの風景というのをアルバム全体で描けた」(橋本)

――なので、ここは敢えて訊きたいんですけど、ceroにとってエロティシズムを歌詞のテーマの中心に持ってくるというのは、まだ躊躇してしまうところなのでしょうか?

髙城:いや、そこは課題なんですよ。もしかしたら、そこが次のステップかもしれない(笑)。実はメンバーともその話はよくしていて。

――あ、そうなんですか?

髙城:例えば日本でもオリジナル・ラブの田島貴男さんなんかはそこをすごくスマートにやってきた方だと思うし、僕たちの友達でもある藤井洋平っていうシンガーソングライターもそこにちゃんと向き合っていて。でも、ceroがこれまで作ってきた作品の流れで、ここでそういう性的なものを突然入れ込むっていうのは、なかなか苦戦したところで(笑)。同じ欲望でも、食の描写とかではこれまでやったことのないところまでやってみたんですけどね。

――確かに、歌詞の生々しさ、「raw」な感じっていうのは、これまでになく出ていると思いました。

髙城:あぁ、そうかも。

荒内:ただ、さっきも「音の構造をサンプリングする」って話をしていましたけど、この作品ではやっぱりそこをやりたかったんです。ブラックミュージックといえばブラザー&シスターであり、性でありっていう、そこはひとまず置いておいて、とりあえず「構造を取り出す」ということに主眼があって。あくまでもやっている人間のパーソナルは変わらないわけだから、歌の内容に関しては地続きであっていいんじゃないかなって。

――なるほど。ただ、もはや今回の『Obscure Ride』を、これまでceroの音楽についてさんざん言われてきたような「シティポップ」なんて言葉で呼ぶのは、ものすごく乱暴だよなぁと思いますね。

髙城:あぁ(笑)。最初はやっぱり、「シティポップ」と呼ばれることにものすごく違和感があったんですよ。僕の思うシティポップって、山下達郎さんとか吉田美奈子さんとかの音楽だったので。でも、そのうち「あぁ、街のことを歌ってる音楽ってことなんだ」って、そういう広い意味で今は使われていることを理解してからは、「まぁ、確かに街のことを歌ってはいるよな」と(笑)。だったらもうちょっと自覚的に、街の猥雑さだったり、うらぶれた部分だったり、ゲスな部分だったり、そういう70年代80年代の煌びやかなシティポップが歌ってこなかったところも引っくるめて2015年の街の景色を音楽にすることができたらなって。そして、そういうものがもしまだ「シティポップ」って呼ばれるんだったら、それはむしろ愉快だなって、今はそう思っていて。その音楽的な受け皿になるのが、今回のようなドライな質感のソウルミュージックで。ただ、今回のアルバムはそれ一辺倒ってわけじゃなくて。

――そうですね。はい。

髙城:橋本くんの書いた曲には、街の持つ煌びやかで華やかな側面も含まれていると思うし。

橋本:確かに、僕の曲はそうかもしれないですね。それも含めて、街の昼と夜の風景、表通りと裏通りの風景というのをアルバム全体で描けたかなって。

髙城:うんうん。そっちの方が東京のリアルと言えばリアルだから。あんまり行き切っちゃうよりね。

荒内:作品がより立体的になったかなって。僕らは30代ですけど、30歳の音楽好きが普通に聴けるような作品を作ったつもりなんですよ。もちろん10代の人にも20代の人にも聴いてほしいですけど、30代、40代、そういう大人な人たちにも僕ら全然対応できますよって(笑)。

髙城:ステージから見ていて、最近は僕らの演奏に合わせて、お客さんのノリがちょっと変わってきているのが面白いんですよね。

――でも本当に、日本の音楽シーンにおいてこの『Obscure Ride』は後の時代から振り返った時に、相当重要な作品になっていくと思いますよ。

荒内:今回、ライターの方でそういうことを言ってくれる人が多いんですよ。これは日本の音楽シーンにとってメルクマールになる作品だって。でも、そこには「売れるかなぁ」みたいな本音も隠れていそうで(笑)。

――いや、これまでceroを聴いてこなかった人も振り向かせるような作品だと思うし、売れるんじゃない? というか、売れてシーンの景色を変えてほしいです(笑)。

荒内:そうやって「売れてほしい」と思ってくれている人がたくさんいるということは、きっと売れますね! ……だといいなぁ(笑)。

(取材・文=宇野維正)

■リリース情報
『Obscure Ride』
発売:2015年5月27日(水)
価格:初回限定盤(CD+DVD) 3148円+税
   通常盤(CDのみ)2685円+税

<CD収録内容>
01.C.E.R.O
02.Yellow Magus (Obscure)
03.Elephant Ghost
04.Summer Soul
05.Rewind Interlude
06.ticktack
07.Orphans
08.Roji
09.DRIFTIN’
10.夜去
11.Wayang Park Banquet
12.Narcolepsy Driver
13.FALLIN’

<DVD収録内容>
『Wayang Paradise』
01. ワールドレコード
02. わたしのすがた
03. exotic penguin night
04. マイ・ロスト・シティー
05. Contemporary Tokyo Cruise
06. roof
07. Birdcall
08. outdoors
09. cloud nine
10. マクベス
11. (I Found it)Back Beard
12. あとがきにかえて

■ライブ情報
『“Obscure Ride”Release TOUR』

札幌:6月7日(日) PENNYLANE
Open 17:30 / Start 18:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別)
問)SMASH EAST:011-261-5569

盛岡:6 月 9日(火) Change WAVE
Open 18:30 / Start 19:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別)
問)ノースロードミュージック:022-256-1000

仙台:6月10日(水) Darwin
Open 18:30 / Start 19:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別)
問)ノースロードミュージック:022-256-1000

松本:6月13日(土) 松本Sound Hall a.C
Open 17:30 / Start 18:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別)
問)FOB新潟:025-229-5000

金沢:6月14日(日) AZ
Open 17:30 / Start 18:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別)
問)FOB金沢・076-232-2424

神戸:6月18日(木) VARIT
Open 18:30 / Start 19:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別)
問)SMASH WEST:06-6535-5569

京都:6月20日(土) KYOTO MUSE
Open 17:30 / Start 18:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別)
問)スマッシュ・ウエスト:06-6535-5569

高松:6月21日(日) DIME
Open 17:30 / Start 18:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別)
問)DUKE: 087-822-2520

熊本:6月23日(火) Django
Open 18:30 / Start 19:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別)
問)BEA:092-712-4221

鹿児島:6月24日(水) SR HALL
Open 18:30 / Start 19:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別)
問) BEA:092-712-4221

長崎:6月26日(金) Studio Do!
Open 18:30 / Start 19:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別)
問) BEA:092-712-4221

福岡:6月27日(土) BEAT STATION
Open 17:30 / Start 18:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別)
問) BEA:092-712-4221

広島:6月28日(日) CLUB QUATTRO
Open 17:30 / Start 18:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別)
問)夢番地広島:082-249-3571

岡山:6月30日(火) YEBISU YA PRO
Open 18:30 / Start 19:00 ¥3,800(前売り/ドリンク代別)
問)夢番地岡山 : 086-231-3531

名古屋:7月4日(土) Diamond HALL
Open 17:00 / Start 18:00 ¥4,000(前売り/ドリンク代別)
問)JAILHOUSE : 052-936-6041

大阪:7月5日(日) BIG CAT
Open 17:00 / Start 18:00 ¥4,000(前売り/ドリンク代別)
問)SMASH WEST : 06-6535-5569

東京:7月12日(日) ZEPP TOKYO
Open 17:00 / Start 18:00 ¥4,000(前売り/ドリンク代別)
問)SMASH : 03-3444-6751
HOT STUFF PROMOTION: 03-5720-9999

<TICKET INFO>
チケット一般発売日:4/18(土)
札幌公演:ぴあ(P:260-854)・ローソン(L:14005)・e+・TOWER RECORD札幌PIVOT店
盛岡公演:ぴあ(P:260-776)・ローソン(L:22692)・e+
仙台公演:ぴあ(P:260-777)・ローソン(L:22693)・e+
松本公演:ぴあ(P:260-790)・ローソン(L:75992)・e+、店頭
金沢公演:ぴあ(P:260-791)・ローソン(L:53403)・e+、店頭
神戸公演:ぴあ(P:260-716)・ローソン(L:53467)・e+
京都公演:ぴあ(P:260-716)・ローソン(L:53467)・e+
高松公演:ぴあ(P:261-014)・ローソン(L:67956)・e+
熊本公演:ぴあ(P:260-536)・ローソン(L:84942)・e+
鹿児島公演:ぴあ(P:260-536)・ローソン(L:84943)・e+
長崎公演:ぴあ(P:260-536)・ローソン(L: 84944)・e+・
福岡公演:ぴあ(P:260-536)・ローソン(L: 84945)・e+
広島公演:ぴあ(P:260-440)・ローソン(L:67877)・e+
岡山公演:ぴあ(P:260-441)・ローソン(L:67878)・e+
名古屋公演:ぴあ(P:260-735)・ローソン(L:46899)・e+
大阪公演:ぴあ(P:260-716)・ローソン(L:53467)・e+
東京公演:ぴあ(P:260-709)・ローソン(L:75846)・e+
企画制作:カクバリズム / SMASH お問合せ:03-3444-6751(SMASH)

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