矢野利裕のジャニーズ批評

SMAP✕椎名林檎✕tofubeatsが照らし出す、国民的グループの「過去」と「未来」

 ちなみに、90年代のクラブカルチャーにおいては、音楽の参照元が70年代あたりのソウルやジャズ、あるいはロックなどであった。90年代におけるSMAPの元ネタも、だいたいそのあたりだ。いま思えば、そこでは、かつてのソウルやジャズといったものがどこか権威化されている。しかし、若い世代のクリエイターにとって、そのような権威は気にされていないようだ。彼らは、洋楽だろうがJポップだろうが、気に入ったものを思いのままに参照する。フラット化などとは83年生まれの筆者世代に対しても言われたが、そんな筆者世代からしても、新しい世代の音楽に対する態度は異なっている印象を受ける。少なくとも、Jポップに対する視線はかなり変わってきているのではないか。そんなことを考えながら「華麗なる逆襲」を聴いていると、90年代最後の年のことを思い出した。「そういえば、某FM局で初めてリクエスト1位になった日本人は、椎名林檎だったなあ」と。椎名林檎が作詞作曲で、tofubeatsがリミックスを手がけたSMAPの曲――この曲の意味が本当に理解できるのは、もう少し先のことかもしれない。

■矢野利裕(やの・としひろ)
批評、ライター、DJ、イラスト。共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう)などがある。

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