なりすレコード〈RECORD STORE DAY〉同時リリース対談

豊田道倫×テンテンコが語る、ロックとアイドルのイリュージョン

テンテンコ「地方って変態がいますよね」

豊田:テンテンコさんは大阪難波のライブハウスのベアーズとか、結構地方にいっていますよね。

テンテンコ:そうですね、特に大阪は多いです。大阪はめっちゃ面白くて。私、この間、PIKAのツーマンのときに、大阪を観光しようと思って、敢えて長めに行ったんですよ。前後に3日間くらい時間を作って。朝から立ち飲み屋がやっていたりして、人も音楽もすごく面白い。隣に座ったもの同士で普通に飲んでいたりして、みんな知り合いなのかと思いました。私、もともと札幌出身で、札幌で面白い音楽をやっている人もいっぱいいるんですけど、やっぱり人が少ないから、規模が小さくなっちゃう。ライブをやっても、来てくれる人が同じだなあ、みたいな。東京は逆に人がめっちゃいるから、割とドライな感じがするんですけど、大阪はすごくちょうどいいなって。初めてフラッと来てくれる人もいるし、本当にずっと追っかけている人もいるし。良い街だと思いました。

ーー豊田さんにとっては地元ですよね。

豊田:うん、だからテンテンコさんとは印象がだいぶ違うと思う。地元の連中は、俺のことを「こいつはこの街を捨てて…」っていうのがあるから、目が厳しいんだよ。ピリピリしてる。「お前は東京にいってもこんなもんか」みたいな。地元って意外にそういうところがあるのよ。また昔の曲ばっかりしやがって、みたいな。お客の女の子に、「俺はそろそろ地元に帰ってくるわ」って言ったら、それはちゃうわ、とか言われて。帰ってくるなということでしょうね。

テンテンコ:えー(笑)。

豊田:自分みたいなやつだからこそ、東京でやっててほしいのかもしれない。でも、東京ももう、現場は悲惨な話が多いよね。客が入っている現場でも実情は赤字とか、ライブ当日にアンプがぶっ壊れていたりするとか。だけど、それでもアナログリリースしようとしたりするのが、今の東京の熱かもしれない。ライブハウスも、ちょっといい時期は全部埋まっている。

テンテンコ:ライブハウスが取れないからか、ライブができるカフェとか増えていますよね。

豊田:地方にもたくさん、人気があるハコはあるから。みんな、イベントはすごく好きみたいで、いい日はどんどん仮予約で埋まっている。だから、ちょっと偶然会った人と一緒にやろうとしても、だいぶ先になっちゃうんですよ。

テンテンコ:土日はとりあえず埋まっていて取れないっていうのが多いですよね。いまは土日にできるっていうことがすごく貴重で。

豊田:本当にそうなってきたね。テンテンコさんはBiSでもいろんなところをまわったと思うけれど、ほかに地方と東京の違いを感じたところは?

テンテンコ:宮崎に行ったときとかめっちゃ面白かったんですけど、地方って変態がいますよね。東京は情報が多いし、いろいろな人がいるからオールオッケーで、変態でも何でも、全部を受け入れてくれる街という感じがするんですけど、地方だとそういう人はどんどん自分の世界に入っていって、より変態になるのかなって思いました。札幌にしろ、宮崎にしろ、そういうところはすごく似たものを感じます。

豊田:宮崎は僕もついこの間行ったんだけど、九州のなかでも陸の孤島って言われているところで、たしかに変態な感じはしたかも。メタジュンっていう人に呼ばれて行ったんだけど……。

テンテンコ:私も同じ人に呼ばれて、彼のライブにすごく感動したんですよ! 
「ストロボマンボ」っていうイベントで、あれは東京では観ることができないものでした。

豊田:東京はもうハコが多すぎて、イベント戦争みたいになっているけれど、地方は時間の進み方も情報量も違うから、逆にそこでしかできないものも育っているのかもしれないね。

ーーテンテンコさんは今後もいまのスタイルでしばらく活動を続けていく感じですか?

テンテンコ:そうですね。私はまず、絶対にやめたくないなっていうのがあって。たぶん、これから続けていくとファンっていうのは確実に減っていくんですよ。でも、絶対にやめたくない。歳をとって、若さとか見た目で売るものがなくなっていても、ずっとやっていたら、私が目標とするものに近づけるかもしれない。私が好きな人は、ずっと音楽を続けている人が多くて。それが自分のなかで感動するポイントなんですよ。子どもの頃からずっと知っているミュージシャンのライブに、いまの私が観に行けるっていうのはがすごく感動的なことで、そういう人に自分がなれたらいいなと思っていて。この前に出したCDは結構自分でも気に入っているんですけど、それを10数年後に聴いた人が『テンテンコ』でネットで調べて、そしたら「まだやっているぞ、やばい!」ってなったら面白いと思うんです。

ーー豊田さんは、やり続けるということにかけてはパイオニアですよね。

豊田:いやいや、僕はそれをあまりかっこいいとは思っていないから(笑)。ぶっちゃけ、大人になるとちゃんと止めてくれる人が周りに少なくなっていくから、それでしょうがなくなって続けている人もいるしね。客が少なくなっても良いステージをやっている人はなかなか少ないと思う。身内で固まって、同じ客がずっと付くとか。たまに同世代の場にいくと、みんな同じような、もうおじさん、おばさんたちの集会で、なあなあになっていて、それでやっていけるのかもしれないけど、スリリングではないなって思う。いいライブを更新していくのは大変だけど、それができなくなったら僕はやる必要はない。

テンテンコ:そうですね、続けるからにはちゃんと更新したい。

豊田:だから、周りから「最高のライブでした!」なんて言われても、本当は最高でもなんでもないライブはいっぱいあるわけだから、その辺を自分でしっかりジャッジしていかなきゃいけないと思う。でも、ふと思い出したら、僕はあるディレクターに、ライブは一回だって誉められなかった。「良くなかった」とか「ヘタ」とか、そんなことばかり言われていた。でも、そういうのが彼の仕事だったし、それはよく思い出して、今でも気を引き締めてライブをやれるのかもしれないな。

(取材・構成=編集部 / 写真=山本光恵)

豊田道倫 & mtvBAND - I Like You
豊田道倫 & MTV BAND『I LIKE YOU』 フロリダ『右手左手』

■リリース情報
『I LIKE YOU』
豊田道倫 & MTV BAND
価格:¥1,620
発売:4月18日

『右手左手』
フロリダ
価格:¥1,620
発売:4月18日

■イベント情報
フロリダ(テンテンコ+滝沢朋恵)インストアイベント
2015/4/18(土)13:30~14:00
ディスクユニオンお茶の水駅前店
●参加対象商品
フロリダ/右手左手イベント終了時までに、ディスクユニオンお茶の水駅前店にて対象商品をお買上げ 頂いたお客様サイン&握手会に参加できる。

●イベント詳細
・4/18(土)当日、開店(11:00)より対象商品を販売。
※買い上げ時の参加券配布はなし。  
※RECORD STORE DAY商品のため、予約は不可。
※購入は一人2枚まで。 
※レシートは整理券配布時に確認。
詳細
http://blog-ocha-ekimae.diskunion.net//Entry/8754

「ブタゴリラ vol.3」
会場:渋谷WWW
OPEN/START17:00 / 17:30
ADV./DOOR¥3,300 / ¥3,800(ドリンク代別 / オールスタンディング)

LINE UP
テンテンコ / 七尾旅人 / ヒゲの未亡人(岸野雄一+ゲイリー芦屋)/ ju sei préférée / 狐火 / 黄倉未来 / フロリダ / 小池美由 / TADZIO
opening act:二丁ハロ
FOOD:くいしんぼうシスターズ
http://ten-tenko.tumblr.com/

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