香月孝史がAKBグループ全体の動きを読み解く

SKE48とNMB48の同時発売に見る、AKBグループの最新戦略 次世代台頭をうながす仕掛けとは?

 川栄李奈の卒業発表やNGT48への北原里英の移籍および柏木由紀の兼任など、大きな動きが相次いだ先の人事異動だが、それらの動きのひとつに兼任メンバーの相次ぐ兼任解除があった。とりわけ特徴的なのがAKB48以外の、姉妹グループ同士での兼任メンバーがことごとく解除されたことだ。AKB48本体と姉妹グループとの兼任は引き続き行なわれ、AKB48は引き続き「中央」として機能していくものと思われるが、SKE48、NMB48、HKT48といった姉妹グループ間での往還は整理され、よりグループとしての独立性が強くなる方針へと切り替わっているように見える。本来、一線を引くものとして存在している乃木坂46との交換留学終了も含めて、姉妹グループ間の交流を制限し、各グループが独自のカラーを鮮明にしやすくする格好になっているのだ。そう考えると、『コケティッシュ渋滞中』と『Don’t look back!』で本来ならば両方の選抜に入っておかしくない兼任の人気メンバーの配属が整理され、本来の所属に専念するかたちになったことは、結果的にではあるが2015年の48グループの方針に先駆けた動きになっていたとも考えられる。

 メンバーの移籍や兼任、特に48グループが巨大組織になった現在の「大組閣」では、発表当初にはその意図が読み取れないものも少なくない。先月の人事異動もまた、一聴して全容が把握できるようなものではなかったし、それはこれからも続くのだろう。兼任を活発にさせた昨年の組閣から一年での、今回の姉妹グループ兼任の整理からは、運営のひとつひとつの采配もまた、確信を持った上のものではなく、試行錯誤の一環であることがうかがえる。もちろん、交換留学生として乃木坂46に配属された松井玲奈が、グループとしてまだ若い乃木坂46にプロ意識を伝導する役目を果たし、最終的にメンバーからもファンからも大きな感謝をもって見送られているような例を考えれば、人事異動当初のメンバーやファンの反応や感慨がそのまま正しいのかどうかもわからない。しかし、ともかくも2015年が過去一年よりも各グループのカラーを示しやすいシフトになるのであれば、それぞれのグループが対照をなして拮抗する姿が見てみたいし、兼任がシンプルになった今回の方針の中で、SKE48、NMB48の次世代メンバーがより台頭しやすくなるならば、48グループ全体にとってもさしあたりの成功といえるのだろう。

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

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