嵐の楽曲はどう“面白い”のか? 柴 那典×矢野利裕がその魅力を語り合う

柴「吉岡たくという人が、嵐を導いたキーパーソンのひとりな気がする」

ーー嵐メンバーが出演する映画主題歌といえば「PIKA☆NCHI」もあります。この曲についてはどういった解釈をお持ちでしょうか?

柴:初期のなかでは、この曲だけ浮いているように感じます。ここまでミクスチャーロックの曲ってないんですよ。ラップメタルという意味ではリンプ・ビズキットあたりも思わせる。ブラックミュージックで始まった嵐にロックが浸食している。実にゼロ年代の中盤っぽい曲ですが、この流れはその後に続かなかった。

矢野:そうですよね。音楽的にはKAT-TUNに歌って欲しい気もする。ジャニーズのグループには必ず、最初に決めた路線から次の一手を探りだすタイミングがある。たとえばテイチクの関ジャニ∞は演歌路線から始まり、その後、ロックが多くなった。V6もユーロビートを手放す時期があった。この頃の嵐も、同じように次の一手を探っていたのかもしれませんね。

ーーそして、00年代の後半へと時代は進んでいきます。

柴:もう断トツで良いのが「COOL&SOUL」(アルバム『ARASHIC』収録)ですよ! クリーン・バンディットみたいなストリングスのサンプリングが超カッコイイ。「嵐isクール」「嵐isソウル」という姿勢がハッキリと表現されている。それまでの「ガムシャラさ」や「青春感」からの巻き返し的な、嵐はこれで行くんだという再出発点といえる曲だと思います。

矢野:「いつ大人になるか」とういのは、どのグループも抱える問題ですよね。どう乗り越えるかはそれぞれ違う。今だとHey! Say! JUMPやKis-My-Ft2が、どのように大人らしさを打ち出していくかを考えている時期かもしれません。音楽的に言うと、嵐は『ARASHIC』辺りがひとつの分岐点ということでしょうか。

柴:そうだと思います。あとちょっとした仕掛けもあって、「COOL&SOUL」の櫻井くんのラップに「4つ前のアルバムに話は遡るんだけどさ」という詞があるんですが、調べてみるとセカンドアルバム『HERE WE GO! 』のオープニング曲「Theme of ARASHI」に遡る、という意味なんですよね。そこで使われていた「太陽光」だったり「近づくスロー」という言葉を、約3年経った「COOL&SOUL」でも使っている。

矢野:なるほど。ヒップホップ的な遊び方ですね。自己言及しながら、自ら連続性を見せていく。

柴:「COOL & SOUL」から「Theme of ARASHI」に遡るというのは、つまりこの間をなかったことにしているっていうことでもあるかもしれない。ここで「幕開け第二章」だと言っているわけだし、俺らの自己紹介ソングはこの2つだと。

矢野:ヒップホップというのは、自分たちで歴史を作っていかないといけないジャンルです。だとすれば、この歌詞にも「自ら歴史を紡いで現在に繋げよう」という意思があってもおかしくありませんね。一方で、「上手く歌えるようになった!」というメッセージも感じます。初期の嵐って、いくらラップをやっていると言っても、全体的にはシンプルな楽曲構造だった。それが、ある時期からリズムに手を加えるようになって、ブラックミュージックのエグい部分を積極的に取り入れるようになりましたよね。『ARASHIC』の少しあとくらいかな。そういう実験的なステップに進んでも、嵐は歌えるグループだから、歌の上手さが際立ってくるんです。あと、「きっと大丈夫」は名曲!

柴:08年の『Dream “A” live』にも良い曲が多いんですよね。なかでも「Step and Go」は「COOL & SOUL」の直系、ブラックコンテンポラリーとダンスクラシックをベースにJ-POPへアレンジした曲です。僕はこの曲のアレンジを担当した吉岡たくという人が、嵐を導いたキーパーソンのひとりな気がする。この時期から彼やTakuya Haradaといったその後の嵐のヒットを支える作曲家と、スウェーデンチームが入ってくるんですよ。ジャニーズにはスウェーデンに投資していて、00年代中盤から関係が密になっているんですよね。単なる取引相手でなく人的なつながりが相当できたことがフィードバックされ始めたのも、このころだと思う。

矢野:僕は『Dream “A” live』の中だと「Flashback」が良かったですね。こういうゆっくりしたテンポでちゃんと歌を聴かせられるのは大事。あと「Life goes on」もわりと音数の少ないシンプルな曲ですが、ヴォーカルとのバランスが良い。渋いです。これらの曲は、ビートはシンプルでありながら、歌唱力で変化をつける作りになっています。僕らリスナーは、そこから彼らの歌の上手さやえぐみを感じる。だから、こういう曲を聴くと「歌が上手くなったね」と嬉しくなります(笑)。このアルバムは、全体を通して、そういった嵐の技量を感じさせる曲が多いですよね。

柴:この後にベストをリリースするから、『Dream “A” live』は嵐のひとつの到達点でもありますよね。そして『All the BEST! 1999-2009』がリリースされて、年間1位で天下をとった。

矢野:たとえば宇多田ヒカルが出てきた時に、みんな彼女の節回しに驚きました。でも、カラオケで歌いまくった若い世代には普通にできちゃうことです。嵐も、先代のSMAPとは違ってたと言っては悪いですが、そういう歌い方が普通にできる。それはダンスも同じで、大野くんは全体のビート感をキープしたままわざとハズして踊って、そのうえで歌も歌える。こういうパフォーマンスを見ると、嵐は次世代のグループとしてある種の頂点に行き着いた感があります。

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