フラワーカンパニーズ『Stayin’Alive』リリース特別企画

漫画家・福本伸行が語るフラワーカンパニーズの魅力「人間は生きている限り情熱は捨てられない」

 

「ヒットチャートに辟易している人も、フラカンなら絶対に聴ける」

――福本さんにとってフラカンとの出会いの曲、「深夜高速」への思いを伺いました。その他に、お気に入りの曲はありますか?

福本:たくさんありますよ。例えば、「元少年の歌」(10年)。この曲も大人が聴くと、誰もが痛みを感じるでしょう。「ああ、そうだよな。俺もこうやって疲れて、いつの間にか挑戦しなくなって…」って。でも、この曲はそれをダメだというのではなくて、打ちひしがれながらも、ちょっと前を向こうという気分にしてくれる。ヒットチャートはアイドルソングばかりで、それもいいんだろうけれど、30代から50代くらいで「最近、音楽を聴いていない」という人も少なくないと思う。そういう人たちでも、フラカンなら絶対に聴けると思うんですよね。「元少年の歌」は本当にじわっときて、心が昂ぶる曲ですよ。

――これも福本さんの作品に通じるところですが、“時代に左右されない”音楽を続けてきたフラカンの強みでしょうか。

福本:そうそう。時代に迎合しないというか、したくてもできないというか。根幹がしっかりし過ぎている(笑)。「売れる曲」のセオリーがあったとしても、彼らはそれに乗れない。乗らないんじゃなくて、乗れないんじゃないのかな? 「突っ走れ!」「君のためなら死ねる!」みたいな煽り方もしないし、聴いていて本当に癒されますよ。そして、またちょっと頑張ろうかな、と思う。俺、本当によく聴いているんだよ(笑)。

 

「脳内百景」(06年)や「たましいによろしく」(08年)もいい。普通、何度も聴くと疲れてしまうセリフ入りの曲も、フラカンはいいね。例えば、「東京タワー」(03年)は“打たれる”という意味では「深夜高速」と双璧だし、小学生時代の自分との掛け合いに心揺さぶられる「この胸の中だけ」(08年)も好きで。

「東京ヌードポエム」(00年)、「日々のあぶく」(10年)、「なれのはて」(12年)…と、挙げればきりがないけれど、忘れちゃいけないのが「人生GOES ON」(12年)。この曲にはフラカンが言いたいことが概ね詰まっていると思うし、俺が言いたいのもそれだ!という感じ。<楽しむ事って案外難しい><努力をしないと楽しめないんだ>って、本当にそうだと思いますね。

――最新アルバム『Stayin' Alive』についてはいかがですか?

福本:もう15枚目だというのに、新鮮な曲がたくさん入っているのがすごいと思った。1曲目の「short hopes」から心をつかまれたし、<何回こけても出直すよ 手遅れの馬鹿だもの>から始まる3曲目の「星に見離された男」も面白い。「地下室」「死に際のメロディー」「祭壇」と、死を連想させる曲が入っているのも印象的でしたね。

――「星に見離された男」は、何度人に出し抜かれても食らいつく『カイジ』のイメージにピッタリの曲だと思いました。「地下室」は、年齢を重ねたメンバーが初めて“死”というものに正面から向き合って作った曲だそうです。

福本:「short hopes」がまるで遺言のようで、本気で心配になっちゃったよ(笑)。圭介さん、何か重たい病気でも抱えているのかな、って。曲を生み出すことにまだ全然、飽きていない。新しい心の粉がまだちゃんと入っている感じ。いろいろとイメージが湧き出てくるなかで、今回は死がひとつのテーマになったのかなと。

 

――25周年にしてまた新しいテーマを見つけたことが、新鮮な印象につながっているのかもしれませんね。

福本:稀にそういうことを続けられる人たちがいるんだよね。フラカンは、例えばサザンオールスターズみたいに長年ずっと売れ続けているわけじゃないけれど、いい曲をポン、ポンって出し続けている。これまでは「前へ、前へ」という感じだったところから、今作はなんとなくだけれど、自分の最期から逆算して、「どうせ死んで骨になっちゃうんだから、こう生きよう」みたいなイメージが伝わってきました。「こんな切り口で考えれば、自分の何かが刺激されて、新しい曲ができるな」という発想がうまくいったパターンだと思う。普通、アルバムを買うと気に入るのは3曲くらいで、他の曲は聴き流しちゃうけれど、このアルバムは聴きどころがたくさんあったよ。本当。

関連記事