市川哲史の「すべての音楽はリスナーのもの」第9回

嵐が<崖っぷち>アイドルだった頃(後篇) モラトリアム期間に培われた「嵐らしさ」とは?

【嵐が<崖っぷち>アイドルだった頃(前篇)+市川哲史がTOKIOへ“ごめんなさい”】
【嵐が<崖っぷち>アイドルだった頃(中篇) 市川哲史がグループの“仲の良さ”を読み解く】

 私が初めて嵐と逢った2004年秋、彼らは結成&デビュー5周年を迎えながらも、まさに<崖っぷち>アイドルの頃だった。

 シングル『PIKA★★NCHI DOUBLE』は3作ぶりに週間1位を獲得したが、累計売上は15万枚に届かない過去最低の数字。続く『瞳の中のGalaxy』は25万枚に持ち直したものの、年間チャートは29位で後輩NEWS『希望~Yell~』の後塵を拝したほどだ。

 参考までに翌2005年の年間チャートから、ジャニーズ勢だけピックアップすると――。

 1位、修二と彰『青春アミーゴ』→6位、KinKi Kids『Anniversary』→9位、トラジハイジ『ファンタスティポ』→14位、SMAP『BANG!BANG!バカンス!』→17位、SMAP『友だちへ~Say What You Will~』→24位、KinKi Kids『ビロードの闇』→32位、NEWS『チェリッシュ』→34位、NEWS『TEPPEN』→36位、関ジャニ∞『好きやねん、大阪。』ときて53位と55位にようやく、『WISH』と『サクラ咲ケ』がランクインとは。それでも前者は8作ぶりの30万枚超えだったのに。

 うーん。さらに2006年もなかなかの阿鼻叫喚だ。

 1位、KAT-TUN『Real Face』→3位、修二と彰『青春アミーゴ』→4位、山下智久『抱いてセニョリータ』→5位、KAT-TUN『SIGNAL』→11位、SMAP『Dear WOMAN』→13位、KAT-TUN『僕らの街で』→15位、TOKIO『宙船』→18位、SMAP『Triangle』→20位、KinKi Kids『SNOW!SNOW!SNOW!』→21位、KinKi Kids『夏模様』→24位、タッキー&翼『Venus』→27位、SMAP『ありがとう』→29位、KinKi Kids『Harmony of December』→31位、堂本光一『Deep in your heart』→39位、NEWS『サヤエンドウ』→45位、嵐『きっと大丈夫』→51位、嵐『青空ペダル』……ジャニーズ内チャートでもなんと下位なことか。

 それでも、KAT-TUNのデビュー曲を作詞したばかりのスガシカオと私が、「ジャニーズでいちばん面白いのは嵐だよね」「そうなのよ!」とひそかに意気投合していたのも、この06年の早春だったりするのだ。

 一般的なブレイクは翌07年2月リリースの、年間5位にしてジャニーズ内初の1位曲『Love so sweet』からだけれども、それまでの崖っぷち時代からなぜかずーっと、我々音楽者たちの心をくすぐっていたのである。

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