メジャーデビューアルバム『FRIENDS』インタビュー

Sugar's Campaignが語る、新世代のポップミュージック論「ポップを突き詰めると気持ち悪くなっていく」

 

 関西出身のSeihoとAvec Avecによる都市型ポップユニット・Sugar's Campaignが、メジャー1stアルバム『FRIENDS』を1月21日にリリースする。Sugar's Campaignの特徴は、Seihoのブレイクビーツ・トラップ・ジューク・ダブステップなどを組み合わせる音楽的指向性と、異彩を放つファッション、そしてAvec Avecの得意とするアーバンテイストのポップスや、ベースミュージックの要素を兼ね備えたサウンドメイクが、絶妙のバランスで融合している点だ。彼らは2012年1月に「ネトカノ」をネット上で発表し、同曲は2014年9月に3年という年月を経て初のCD化がなされるなど、徐々にその地名度を上げるなかでメジャーデビューが決定。今回リアルサウンドでは、Sugar's Campaignの2人にインタビューを行い、ユニット結成の経緯や2人のルーツ、一風変わったポップス論などについて大いに語ってもらった。

「90年代アニメのエンディングテーマが好き」(Avec Avec)

――前身がバンドだったこともあり、今も自分たちを「バンド」と形容することが多いですよね。

Avec Avec:当初は“単純に二人のトラックメイカーがやっている”という意味付けへの差別化として使ってました。最近はプロジェクト的な意味合いが強いので、「劇団」が比喩としては正解なのかもしれません。

Seiho:「バンド」以外にいい意味合いの言葉があればいいんですけどね。プロデューサーが2人いることがSugar's Campaignではなくて、僕らが入っているこの空間・世界がSugar's Campaignなんです。

Avec Avec:元々は大学生時代に、今もゲストボーカルとして歌ってくれているあきお(畑田啓太)と、何曲か歌詞を書いてくれている小川(リョウスケ)くんと僕の3人で組んでいたバンドが前身なんですけど、就職活動などで僕一人になってしまったので、Avec Avecというソロ名義で活動を始めました。ですが、やはり歌モノポップスをやりたいという気持ちが強く、Seihoを呼んでSugar's Campaignを始動させました。彼は、元々仲が良かったこともあって、コンセプトに共感してくれたし、物語を共有しやすいんです。

――2011年に制作され、ネット上ではじわじわと広がりながら、フィジカルリリースまでに3年の歳月を要した「ネトカノ」はどういう形で制作されたのでしょうか。

Avec Avec:僕は洋楽が好きなこともあり、作曲する時には、気持ちいい発音の適当英語で作って、そこから日本語を嵌めていくんです。あとは夏休みの朝にやってる90年代アニメのエンディングテーマって、ちょっと大人っぽくて切ない曲が多くて好きなんです。あの時代のアニソンに感じた大人への憧れを入れている部分も大きいですね。

Seiho:「ネトカノ」の時は、具体的な方向性は決まってなくて、語感を優先しつつ、使える単語と世界観とでバランスを録っていったんです。アニメもそうですし、僕らにとっては『ポンキッキーズ』や『天才てれびくん』とか『ウゴウゴルーガ』が大人を知るきっかけやったんですよね。スチャダラパーとか山下達郎は『ポンキッキーズ』で知りましたし、『ウゴウゴルーガ』で知ったCGクリエイターの人たちも、まだずっと好きですもん。

――共通項に『ポンキッキーズ』を挙げる意味は、同世代として大いに共感できます。他の共通項として、久保田利伸や岡村靖幸があるわけですが、二人の出自はそれぞれ全く違いますよね。

Avec Avec:僕はXTCやポール・マッカートニー、トッド・ラングレンのような白人音楽が好きでした。ベル・アンド・セバスチャンやスーパー・ファーリー・アニマルズもそうですね。

Seiho:僕は黒人音楽がルーツで、父親と弟がビバップ・ジャズ好きなんですけど、僕は当時出てきたばかりの<WARP>や、エイフェックス・ツインを聴いて衝撃を受けました。そことジャズの共通項を探してジャイルス・ピーターソンなどに辿りついて、<Mo'Wax>とかアシッドジャズ、アブストラクト系に傾倒していきました。

――Sugar's Campaignにおいて、それぞれ担っている部分は何だと思いますか。

Seiho:今回のアルバムを作って思ったんですが、Sugar's Campaignに関しては、なるべくAvec Avecがソングライティングをする形で、僕はその周りに付属するビジュアルや歌詞をディレクションしていくのが良いかなと感じました。僕は、彼が創ってきた曲に対して、起爆剤になりたいですし、要らない音や情報を削ぎ落としていって、お客さんの第一印象の幅を広くしたいです。

Avec Avec:僕は結構Seihoの一言で考えが変わることもあるので、それは大きいです。

――歌詞の作り方は、二人で和気あいあいと話しながらストーリーを作って、そこから歌詞を書くスタイルですよね。

Seiho:二人とも、曲を作る時に世界の設定から始めるんです。そのディティールは細かく決めたくて、語感は大事にしつつも「女の子/男の子/疑問文/断定」なのかというディティールを深くしていって、世界観を決めます。

Avec Avec:そこが決まってからも、何だかんだ…ゆっくりやな(笑)。

関連記事