二人の大重鎮が明かす、ディープな日本ロック史
外道・加納秀人×頭脳警察・PANTA対談「40年蓄積されたホンマモンのことが、やっと出来る」
「狭い閉鎖された空間の中で、一緒にアーティストを観て楽しもうっていう空気がなくなった」(PANTA)
――それは観たかったですね。外道の音楽は、ライブを観てもらえれば確実に伝わるんですよね。
加納:絶対にわかる。音が違うから。ライブを体験すると人間が生きているエネルギーを、生きるために必要なエネルギーを貰えます。音楽って食事とか空気とか自然の大事な物と変わらないぐらいのものを持ってるんですよ。でも、死んだような音楽はそんなエネルギー持ってなんかいないけど、本当に生きてる良い音楽は、ちゃんと持っているので、それを体験してもらいたいと思う。絶対聴かせるから。
――それ、よくわかります。ただ、新しい人がライブに来るまでが大変じゃないですか? やる側としては絶対完璧な自信があっても、そこに新しい人にどうやって来てもらうかっていうのは問題だと思うんです。PANTAさんは、その辺どう思いますか?
PANTA:ライブハウスのあり方も問題だと思う。昔はライブハウスのオヤジさんと、そこに居座っているお客さんとで、一緒にアーティストを育てるという環境が、その情熱とともに色んなところにあったと思うのね。みんなライブハウスやお客さんとともに育っていった。ところが新宿ロフトとかのいわゆる老舗のライブハウスの形態と違って、「なんだライブハウス儲かるじゃないか」ってどんどん色んなライブハウスが出てきて、チケットノルマというものを課してくるようになった。それでアマチュアバンド何組かを集めて、チケットを売らせる。ライブハウスだけがリスクを背負わないんです。いくらもしないコーラを一杯500円で何の疑問も持たずに飲ませて、そういう中で義理でチケットを買わされた奴が行く。そりゃあ友達のを観たらすぐ帰るよ。それで狭い閉鎖された空間の中で、一緒にアーティストを観て楽しもうっていう空気がなくなった。ライブハウス自体が、もう少しやり方を考えた方が良いんじゃないかな。
――箱側の問題もあると。
PANTA:そうそう。逆にライブハウスじゃなくて、ちょっと飯食わせるところで、楽屋も無い音響設備も無いところでもライブ出来るじゃないかって状況になっている。やる場所を探してるミュージシャンはいるから、そういうところでもやっちゃうんだよ。だからとっても寂しい状況なのね。本当はライブをやるんだったら、もう少し環境を考えなきゃいけないのに「出来るじゃないか!」ってね。そういうミュージシャンはたしかにたくさんいますよ。それで発表の場を持っている人もいるし。でもそうじゃなくて、もう少し音楽的に熟成した社会を作るためにはどうしたらいいのか? っていう問題。たとえばフェスもものすごく重要なんだけれども、最近ではとにかくフェスが大型化しちゃって、こじんまりしたフェスっていうのが無くなってきてる。自然の中で、全体の中でみんなが自由に、好きなバンドを楽しめるフェスがなかなかないんですよ。
加納:今の大きなイベントっていうのは、お金絡みになっちゃっていて良いものを聴かせるっていう発想ではなくなってきているから、残念ですよ。これとこれと出せば人気があって、これだけの収益があるってね。そういうのが今のやり方でしょ? そうじゃなくて、もともとは良い音楽を、カッコいいものをとにかく聞かせたくてやるものだと思う。だから、今回のアルバムだって40周年記念アルバムをリリースした後の、単なる新作じゃないんですよ。今までやって来た中で蓄積されて溜まったホンマモンのことが、やっと出来るスタートラインなんです。なぜ『Rocking The BLUES』かって。ブルーで落ち込んだところを俺のエネルギーと気で、Rockでハッピーにさせるってことです。俺のこと嫌いでもいいから、エネルギーを与えて、生きる力を、希望を、やっと音の中で出せるようになって来たアルバムなんですよ。本来、音楽にはどれだけのエネルギーが入ってるのか、このアルバムで体験してもらいたいですね。
(取材・文=ISHIYA/写真=石川真魚)
■リリース情報
『Rocking The BLUES』
発売:2015年1月7日(水)
価格:3,000円(税抜)
<収録楽曲>
1. SHAKE IT BABY
2. It’s a MAD WORLD
3. Rockで行こうよ!
4. What a BITCH
5. Play BLUES
6. 逃げるんじゃねえ!
7. イエローモンキーブルース
8. Happy Birthday
9. OH my my
10. Life and Death そして運命
11. Baby Rock’n Roll
12. 俺のRock’n Roll
13. あの頃は