香月孝史が東京女子流の年末ライブを分析

東京女子流の2014年は“ネクストステージ“への助走期間だった? グループの長期戦略を読む

 東京女子流が12月20日に東京・渋谷公会堂で『CONCERT*05 ~カワイイ満載見納めPARTY~』『CONCERT*06 ~STEP UP TO THE NEXT STAGE~』の2公演を開催した。両公演のタイトルに表されている通り、昼夜連続のこのライブは東京女子流のこれまでと、そして来年以降の新たなステップへの示唆との二側面を表現するものになった。東京女子流にとって年末に大きな会場でライブを行なうことはグループの恒例であり、それらのライブは一年ごとの成長度合いと現在点を確認する節目になってきた。その流れの中で今年の年末ライブは、一日の間にデビューからこれまでの総括と、次の段階への方向付けとを明確に示し、グループが自らの立ち位置を変えようとしていることを伝えるものになった。

 1stアルバム『鼓動の秘密』収録のライブ定番曲「孤独の果て~月が泣いている~」からスタートした昼の部『CONCERT*05 ~カワイイ満載見納めPARTY~』はデビュー以降、東京女子流のライブでお馴染みになった曲を中心にしたセットリスト。ファンと振付を共有することを前提にした「おんなじキモチ」に象徴される、アイドルファンへの門戸を広く開いたバランスのライブとなった。ライブ前半の楽曲をすべて1stアルバムと2ndアルバム『Limited addiction』収録曲で埋め、自己紹介ではかつて一時的に使用していた各メンバーの一言キャッチフレーズを添える等、アイドルシーンに強くコミットしてきた初期活動を広く詰め込んだ構成だったといえる。

「アイドルシーンに強くコミットしてきた」とわざわざ書いたのは、東京女子流は自らを「ダンス&ボーカルグループ」とし、「アイドルグループ」とは位置づけてこなかったためだ。とはいえ、それはアイドルというカテゴリーを軽視したり拒否するような頑なな態度では一切ない。東京女子流は「アイドル」カテゴリーの一員としてイベントに出演することや、アイドルシーンで一般的な販促イベントなども柔軟に行ない、「アイドル」というジャンルに敬意を持って参与してきたグループである。だからこそアイドルファンに広く支持される楽曲も発信できたし、それらの作品は今後もアイドルファンにとって重要なものであり続けるはずだ。しかし同時に、東京女子流は長期的な視野で、アイドルシーンの慣例から独立する志向を持ってきたことも事実だ。この日、「カワイイ」と銘打たれた楽曲が彼女たちに似合わなかったものでは決してないが、グループの長期戦略として別の色合いを見せるタイミングを、この日は昼夜公演のコントラストではっきり打ち出した。

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