「宗像明将の現場批評〜Particular Sight Seeing」第6回 清竜人25『ハーレムフェスタ2014 vol.2』
アイドルの禁忌を正面突破した清竜人25 擬似恋愛もガチ恋も超えた「夫婦の営み」とは?
そう、清竜人25には、通常の「アイドルを見る」という状況下での精神的な枷を見る者に外させる何かがある。そもそも、清竜人は夫人たちを抱き寄せたり、キスしようとしたり、しきりに「接触」しているのだ。婚姻関係にあるという設定なので当然だが、しかしたとえば第5夫人の清菜月は、5月までは純粋な「アイドル」であるTAKENOKO▲のメンバーとして活動していた。CDを何枚買っても握手止まりの「接触」しかできないヲタからすると、ここまできたら、もはや吹っ切れるしかない状況なのだ。
そもそも日本のアイドルという文化自体、性の匂いを表に出さずに、しかしそれを最大限に活用するというダブルスタンダードのもと形成されてきた。アイドルにとって性は禁忌であり(そのわりによくボロが出るのだが)、その禁忌を「婚姻」をもって唐突かつ鮮烈に正面突破したのが清竜人25だったのだ。同時に、清竜人には音楽面やステージ面でもその衝撃波を受け止めるだけの実力があった。
とはいえ、実際の清竜人25のステージには、性の匂いはほとんどしない。上記の接触程度で、それもコントのように笑いに吸収されていく。「Will♡You♡Marry♡Me?」のヴィデオ・クリップでの清竜人の男の色気には岡村靖幸も連想したが、ステージ上の岡村靖幸が屹立した男性器そのものだとするならば、清竜人は常に6人の夫人相手に愛撫を続けているマメな亭主のようだ。
清竜人25について、「素朴にメタ」と看破したのは『MARQUEE』誌の松本昌幸編集長だった。「ガチ恋」に代表されるような恋愛対象となる要素を「婚姻」をもってアイドルから排除し、一方で性の匂いをほとんどなくしたことで、もはや残ったのは楽しさしかない、というエンターテインメントを清竜人は直感的に生み出してしまった。しかも、妙な邪気がないので生半可ではなく強度が高い。
清竜人はMCで一言も話さない。「竜人しゃべってー!」という女性ファンの絶叫が会場に響いても一切話さないのだ。自身のベスト・アルバム『BEST』発売についても、アンコール後にひとりだけステージに残した夫人に耳打ちして、彼女にマイクで告知させる。そして、夫人がふてくされたように清竜人の背中を押しながら、ふたりはステージから去っていった。このラヴラヴムード。禍々しいならまだしも、何の曇りも感じられない。もはや擬似恋愛もガチ恋も介入の余地がないのだ。だから純粋なエンターテインメントしか残らない。