ターボ向後のマニアック音楽シーン探訪

アヴィーチー、プロディジーらが“音作りの方法”を解説 傑作ビートメイキング映像まとめ

名機を使用したヒップホップのトラックメイキング映像

 やはり「ビート・メイキング」といえば、ヒップホップのトラックメイカー達が真打ちだろう。現在でも国内外で多くのトラックメイカーが使用する伝説の名機・AKAIのMPCシリーズ、そしてPCでのトラックメイキングの定番となっているAbleton Liveといった機材&DAWを使用した映像の数は、他のジャンルを圧倒しており、カニエ・ウェストやピート・ロックといった大物アーティスト達も、YouTube上でビートメイキングの様子をチラ見せする映像を公開している。

 まずは、明らかにストーンドしてキマりまくった状態で、ヴァイナルから抜き出したサンプルを延々チョップ&フリップ(MPC上のパッドにサンプルした音を配置してサウンドを再構築する事)して、ドープなトラックが完成するまでをドキュメントしたJaisuの映像をご紹介しよう。

MPC 1000 beat making

 続いては、JAY-Z「DEAD PRESIDENTS」のトラックを手掛け、一躍シーンで話題となったSki Beatzが、愛用のAbleton Liveでトラックメイキングをする映像。

Ski Beatz - Unique techniques with Ableton Live

 様々なトラックメイカーが「レコード屋で"ジャケ買い"した3枚のレコードから1曲を作る」というお題に挑む「Rhythm Roulette」シリーズ。以下の映像はアンダーグラウンド・ヒップホップの重鎮、カンパニー・フロウのトラックメイカーとしても活躍したEL-Pが、そのミッションにチャレンジしたもの。

El-P - "Rhythm Roulette"

iPhoneアプリの限界にチャレンジ!?

 一見専門的で初心者にはとっつきにくいように思えるビートメイキングの世界。しかしその状況は、iPhoneの発売と共に登場した数々のアプリにより一変、多くの音楽ファンにとって身近なものとなった。そんな音楽系アプリの傑作の1つが「iMACHINE」。中田ヤスタカやナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナー、女子DTMerとして知られる並木優までが愛用するスタンダードなソフトシンセ(PC上で駆動するシンセサイザー)メーカー、NATIVE INSTUMENTS社が開発したものだ。これを使えば、iPhoneが1台あればどんな場所でも「宅録」環境がセットアップできる。これを使って自らの楽曲を制作する過程を公開したのが、最先端のビート・ミュージックとビンテージなAORをミックスしたサウンドで人気のJamie Lidell。

Director's Cut: Jamie Lidell performing with iMaschine

 iPhone片手にベッドに寝転がりながら、ボーカルを含む全てのトラックを構築していく姿は、まさに究極の「宅録」ミュージックと言えるかもしれない。

 動画サービスの普及によって、日本でも「唄ってみた」「踊ってみた」「弾いてみた」といった音楽的な技術を"披露"するコンテンツは多く生み出されたが、チュートリアルとしても機能し、音楽の謎を"解き明かしてくれる"映像コンテンツは、まだ少ないように思える。先日全米で公開がスタートした音楽ドキュメンタリー『Take Me To The River』では、メイヴィス・ステイプルズやオーティス・クレイといった1970年代のソウルアーティストから、スヌープ・ドッグらヒップホップ・アーティストを経て、またその子供達へと“音楽が世代を越えて受け継がれていく”様子を映し出している。そこには、音楽の普遍性と、その技術を共有する事によって起こる奇跡があった。今回ご紹介したビートメイキング・ムービーもまた、音楽という表現形態が持つ奥深さを人から人へと伝え、新たな文化を育むものだろう。日本でもこうした映像がより多く生まれることを望みたい。

■ターボ向後
AVメーカーとして史上初「映像作家100人 2014」に選出された『性格良し子ちゃん』を率いる。PUNPEEや禁断の多数決といったミュージシャンのMVも手がけ、音楽業界からも注目を集めている。公式Twitter

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