アイドルが売れるには厄介オタも必要!? 姫乃たまが濱野智史に“ガチ恋の心理”を尋ねる

 また、「若くてお金のないオタクにとってガチ恋はコスパがいい応援の仕方」という話に驚かされました。ピンチケと呼ばれる若いファンの男の子たちが、同世代のアイドルに自分はガチ恋だとアピールするのは、記憶に残れるかもという考えからだというのです。「年齢も近いから、もし同じ学校にいたら何かあったかもしれないと思うこともあるでしょうけど、基本的にはアイドルオタクですから。それで記憶に刺さればいいなくらいの気持ちですよ」。現実的な恋愛に発展させたいというよりは、ファンとして認知されることを重視した行動だったんですね。恋に似ているけれど、恋じゃないのです。

 しかしこのガチ恋をこじらせるといわゆる「厄介オタ」になってしまいます。そして厄介オタになる原因は、恋愛が成就しないという単純な理由ばかりではないようです。応援しているアイドルが売れなかったり、グループの中で干されたりしていると、純粋に応援する楽しみが失われて、こじれていく場合もあると濱野さんは言います。こじらせる方向は厄介オタだったり、病めるオタだったりと様々です。私もこじらせオタを今までたくさん見てきました。アイドルがいないところでこっそり病んでしまう人から、こんなグループや事務所は辞めた方がいいと忠告したり、果ては女の子が立ち直れなくなるまで説教してしまう人など、本当にいろいろです。

 正直なところ私は、趣味でそこまで苦しむことないのにと本気で思っていました。そんな風に理解がないせいか、五年間のアイドル生活で厄介オタも病めるオタもファンにいたことがありません(鈍くて気づかなかっただけかもしれないですが)。私に恋をしたり、説教したり、アンチになったり、議論する人もいませんでした。ただ純粋に応援だけでなく、こうしたファンからも影響を受けなければ、アイドルとして売れないということは薄々気付いています。それを伝えると濱野さんは、「そんなにみんながいいねいいねって言い合う現場もなかなかないから、それはそれでいいじゃないですか」と笑って、ようやく頭を抱えるのをやめました。

 「でも30代くらいになるとガチ恋を自称するのって恥ずかしいんで、姫乃さんが40~50代のガチ恋に代わる言葉を作ったらいいと思いますよ」と言ってくれました。なるほどなあ。セカンドライフとかでいかがでしょうか。

■姫乃たま
1993年2月12日下北沢生まれの地下アイドル。2009年より都内でのライブ活動を中心に地下アイドル活動を開始、2011年よりライターとしても活動している。他に司会やDJ、イベンターなど活動は多岐にわたる。
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