映画『渇き。』では女子高生ラッパーも起用 中島哲也監督の“攻めた”楽曲リストをたどる
先日より公開が始まった中島哲也監督の最新作『渇き。』が、何かと話題を振りまいている。プロの批評家のみならず観客の感想は賛否両論、そのくせ「学生1000円」の割引き効果もあり劇場は連日にぎわっているという。
カラフルでポップな映像、時代を鋭くえぐるテーマ性など、中島作品にはその作家性を表すキーワードがいくつかあるが、“音楽”もそのひとつ。有名アーティストのタイアップ曲が使われがちな昨今の日本映画の中では、かなりきちんと選曲がなされているのがわかる。それも国内/海外問わず若手アーティストの楽曲だったり、昭和の懐メロだったりとまさに縦横無尽といった体だ。ここではこれまで中島作品に起用された楽曲を振り返ってみようと思う。
中島監督の名前が広く世に知れ渡るきっかけとなった『下妻物語』(04)。この作品の音楽を手掛けたのは、アニメ作品からNHKの朝ドラまで手掛けるカリスマ音楽家・菅野よう子だ。一見意外にも思えるふたりのタッグだが、その縁は中島監督初の劇場用長編作品『夏時間の大人たち』(97)にさかのぼる。『下妻物語』の主題歌はTommy heavenly6の『Hey my friend』だが、同じくエンディングに使われた福井のインディーズバンド、Browny Circusがカバーしたサディスティック・ミカ・バンドの『タイムマシンにおねがい』が出色だった。
続く『嫌われ松子の一生』(06)はミュージカルシーンも随所に挟みこまれ、全編通して音楽にあふれた1作に。楽曲提供アーティストも木村カエラ、BONNIE PINK、AI、和田アキ子と個性的な女性アーティストが一堂に会した。音楽を手掛けたのはジャズピアニストの渋谷毅とCM楽曲などを数多く手掛けるイタリア人作曲家ガブリエル・ロベルト(ガブリエルは『パコと魔法の絵本』のサントラも手掛けている)。ふたりは揃って、この年の日本アカデミー賞音楽賞を受賞した。とりわけ注目したいのは劇中で繰り返し流れる『まげてのばして』。もともとは60年代に日本でも放映されていた幼児番組『ロンパールーム』で使用されていた楽曲ということだが、まるで松子の生涯を表すために作られたような印象に。これぞ選曲の妙!