古風なのに新鮮な21歳のシンガーソングライター

ガブリエル・アプリンが“創作の喜び”を語る「曲が公共化することで初めて満足感が得られる」

「いろんな国を回って、いまは書くべき題材が増えている」

――日本の映画『黒執事』の主題歌に「Through the ages」が選ばれて、絢香さんともコラボレーションしましたね。映画はご覧になられましたか?

ガブリエル・アプリン:今回来日するときの飛行機で見まして、ダークでしたね。「かわいい」じゃなくて「こわい」(笑)。日本の映画監督をよく知っているわけではないけど、ひとり、名前が出てこないけど1940年代の監督さんで、ブラック&ホワイトの映画ですごくきれいな画を撮っていて好きな人がいるんですけど…。

――小津安二郎? 溝口健二? 

ガブリエル・アプリン:小津 安二郎! 絵柄がとても素敵だしストーリーがとても好きですね。

――日本の文化にはそれこそ「かわいい」ものから小津安二郎の世界までいろいろありますが、一番興味のあるものは何ですか。

ガブリエル・アプリン:かわいいファッション系が一番好きですけど、日本にせっかく来たから寺社仏閣にもよく行きました。京都とか鎌倉ですね。建造物に興味があるので、古い建物はすごく好きですね。猫カフェも行きました(笑)。

――日本では、イギリスで生まれたアコースティックなポップソングに対してずっと伝統的に人気があるんですが、日本人の好きなものとイギリス人の好きなものってどこか共通する部分があるのかなと思います。それについてはいかがでしょうか?

ガブリエル・アプリン:イギリス人は無礼だし失礼だから、日本人との共通点はないかな(笑)。まあそれは冗談として、私がやっている音楽はニッチな音楽だと思う。だから誰もが好きだとは言えないと思うんだけど、なんなんだろう、日本でこんなに受け入れられた理由は。当然日本のことを意識して書いているわけではないし、結果的に受け入れられたことはすごく嬉しいんだけど、どうして受け入れられたのかはわからない。なので、あまりそういうことは分析しないようにしています(笑)。

――なるほど。全英でも1位になって、今徐々にガブリエルさんの音楽が世界中に広がっていますが、今後のビジョンがあれば教えてください。

ガブリエル・アプリン:この後、オーストラリアにツアーに行って、UKに帰ったら、2ndアルバムのレコーディングに入る予定なんです。ひとまず年末まではその作業で忙しくなる思うんですが、私としてはいまの活動を続けていくこと、なにかを育てていくことが大事だと思っていて、なにかを変えようとは思っていません。このまま続けていって幅を広げて、いろんな国を訪ねることをやり続けることがいいなと思っているだけですね。

――次のアルバムのために曲はもうたくさん書いているんですか?

ガブリエル・アプリン:はい!大体半分くらいの曲ができています。そのレコーディングがUKに帰ったら始まるんだけれど、年末になったら仕上げたいと思っています。

――『ENGLISH RAIN』とは違うタイプの曲や、違うサウンドにもチャレンジするんでしょうか。

ガブリエル・アプリン:そうですね、音的にはよりオーガニックといえるのかしら。前と同じでは決してないけど大々的に変わってもいない、という感じになるのではと思います。1stアルバムを出してからもずっと曲を書き続けているので、より広がった世界観をそのまま形にしていこうと思います。

――曲を書き始めた15歳のときと比べると、世界中を旅してきて、多くの経験を重ねて、歌詞の内容も変わってくるのではないですか。

ガブリエル・アプリン:あれから本当にいろんな国をまわってきたので、インスピレーションも得ているし、いろんな影響も受けている。ただ、いまは書くべき題材が増えました。あと前回のアルバムが7年間におよぶいろんな時期に書いたのに対して、今回はまとまった時期に書くので、その違いも出ると思います。でも書くべき題材は日常の出来事がほとんどですけどね。

(取材・文=編集部)

■リリース情報
『ENGLISH RAIN』
発売:2013年12月4日
価格:¥2,457(税抜)

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