宇野維正がファレル・ウィリアムスのソロキャリアを読む
ファレル、全方位型スーパースターに 新作『ガール』ヒット&再ブレイクの理由
グラミー賞授賞式ではダフト・パンクやスティーヴィー・ワンダーと歴史的パフォーマンスを披露、アカデミー賞授賞式ではメリル・ストリープ、エイミー・アダムスらを踊らせて、アメリカの『徹子の部屋』=『Oprah Prime』ではオプラ・ウィンフリーの前で男泣き。アディダスやジースター・ロゥ(オランダのデニムブランド)では自身のコレクションを発売、コム デ ギャルソンと組んで香水を発表、現在はユニクロやレッド・ブルのコマーシャルでも大露出中。ちなみに日本ではすっかりヴィヴィアン・ウェストウッド=小保方晴子みたいなイメージがついちゃっているが、世界的にはファレルお気に入りのヴィヴィアンの帽子が大人気品切れ中。シングル『Happy』はビルボードのシングルチャート8週連続1位を記録中で、(リリースは昨年だけど)早くも「今年を代表する1曲」の座を確実なものに。先週世界中でネット中継されたコーチェラフェスでのパフォーマンスも大評判。4月23日にはハンス・ジマー、ジョニー・マーらと組んだ『アメイジング・スパイダーマン2』のサントラもリリース。とにかく音楽界、映画界、ファッション界、セレブ界、広告業界とすべてを巻き込んで、全方位的にファレル旋風が止まらないのである。
90年代後半から時代を牽引するプロデューサーとして活動していたファレル・ウィリアムスは、ブリトニー・スピアーズやグウェン・ステファニーらにヒットソングを提供する一方で、自らもバンド、N.E.R.D.のメンバーとして活躍してきた。そんな現在41歳のファレルがここにきてスーパースターとして君臨している現象を日本で言うなら(日本で言う必要があるのかというツッコミはひとまず置いておいて)、つんく♂がシングルチャートで8週連続1位をとっているようなものと言っていいだろう。世界的なファッションアイコンをつかまえて何を言ってるんだと思う人もいるかもしれないが、実際に昨年まで、具体的には2013年を代表する2大ヒット曲、ロビン・シック「ブラード・ラインズ」とダフト・パンク「ゲット・ラッキー」に参加するまでの数年間、ファレルの音楽シーンでの立ち位置はかなり微妙なものだったと言わざるを得ない。