「ダフト・パンクの新譜が出て、僕の人生がまた明るくなった」西寺郷太が語る“生の音楽”の魅力

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音楽活動から文筆業まで、幅広く活躍する西寺郷太。

 各方面でマルチな才能を発揮し続けるNONA REEVESの西寺郷太が初のソロ・アルバム『TEMPLE ST.』の発売を記念して、同アルバムの制作に際してインスパイアされた楽曲を挙げつつ、じっくりと語るインタビュー。前編【「仏教と洋楽の“土着化”は似ている」お寺育ちの西寺郷太が初ソロで挑戦したこと】に続く後編では、4曲目の「I CAN LIVE WITHOUT U」から、8曲目の「YOU MUST BE LOVE」までを解説してもらった。

『TEMPLE ST.』全曲解説+インスパイア・ソング

04. I CAN LIVE WITHOUT U

Bob Dylan/I Want You(1966)
Smokey Robinson/Baby That's Backatcha(1975)
Sly & The Family Stone/Runnin' Away(1972)
Lenny Klavitz/It Ain't Over Till It's Over(1991)
曽我部恵一/汚染水(2013)

曽我部恵一「汚染水」【Official Music Video】

西寺:ドラム、ベース、ギター、アコギ、パーカッション、キーボード……この曲はぜんぶ自分で演奏しました。ストリングスとエレピの弾き直しだけ宮川弾さんにお願いしましたけど、ほとんど自分の演奏です。打ち込みではこういうこともあったんですけど、生演奏ではほぼ初めての試みですね。もともと「スヌーピー展」(13年10月から14年1月まで森アーツセンターギャラリーにて開催)のためにつくった曲なんですけど、そういう子供っぽい感じのキャッチーさを狙ったところはあって。60年代の音楽ってちょっとヨレてたりするじゃないですか。僕の場合ナチュラルにそうなっちゃうから却って面白いことになるかと思って、やってみたらすごくいい感じに仕上がりましたね。ソロの部分はエレキとアコギとピアノで自分で連弾したんですけど、そのへんはボブ・ディランやビートルズの頃のひとつのソロの在り方になってるというか。素朴なロックやソウルという意味でいうと、意外にこういう曲ってNONAではできないんですよね。こういうタイプの曲をやれてよかったですよ。

――スモーキー・ロビンソンがまさにそうですけど、郷太くんはファルセットで歌ってもエロくならないんですよね。逆にピュアというかブルーな感じになるのが魅力だと思っていて。

西寺:日本人でファルセットがうまい人ってそんなにいないんですよね。どうしても理屈っぽくなってしまうというか。僕はもともと子供がただ単に純粋に歌ってる感じが好きなんですよ。曽我部さんを選盤したのは、あの人のアティチュードに惹かれるから。曽我部さんがサニーデイ・サービスとして活動しながらソロもやってるスタンスは、NONAがあってソロもやるっていう自分の立ち位置的にシンパシーを感じるところがあるんです。あとはなにより曽我部さんの声が好きなんですよね。おそろしい声だなって思ってて。「この人は何をやっても声がいいよね」と言われることが、アーティストにとっていちばんの褒め言葉なんじゃないかと思います。

5. SANTA MONICA

George Michael/Outside(1998)
Pet Shop Boys/West End Girls(1989)
宇多田ヒカル/Traveling(2001)
Frank Sinatra/Come Fly With Me(1958)
Scritti Politti/The Word Girl(Fresh & Blood)(1985)

George Michael - Outside

――トランシーな始まり方で最初はちょっと驚きました。

西寺:この曲だけ冨田謙さんと2人でつくってるから、他の曲とプロダクションがちょっと別なんですよ。一度トラックをつくり、さらにそれを冨田さんに送ってつくり直してもらったんです。そうしたらコードが変わって戻ってきて、そこにまた新たなメロディを乗せていく、という行程で完成しました。他の曲はぜんぶ僕が主導でつくってるんですけど、そうじゃないものが一曲欲しかったので。ソロなのにコントロールされる喜びがこの曲にはあるんですよね。

――ジョージ・マイケルの「Outside」がそうであるように、この「SANTA MONICA」も大箱のダンスフロアが似合いそうですね。

西寺:冨田さんはずっとFANTASTIC PLASTIC MACHINEの制作の鍵を握っている人ですし、クラブ・ミュージックには、その進化の歴史とともに歩んできた人。ここでは冨田さんからボーカル・ディレクションも受けていて、「サビはフランク・シナトラみたいに歌ってほしい」ってオーダーがあったんですよ。だからサビの部分だけ歌い方が妙に大きくて、そのへんも大箱感につながってるのかもしれないですね。

 宇多田ヒカルさんの「Traveling」に関しては、歌詞の乗せ方みたいなところですかね。宇多田さんの日本語と英語の混ぜ方とか、歌詞を書くときのひとつの指針にしています。

 スクリッティ・ポリッティはピンポイントで、「窓ガラスに吐息吹きかけた 君は指で はかなく消える夢描いた 手を伸ばすごとに揺れるシャドー」という歌詞の部分ですね。「The Word Girl」のミュージック・ビデオにそういうシーンがあるんですけど、これは宇多丸さん(RHYMESTER)狙いで書きました。ただひとりのために捧げたラインというわけです(笑)。

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