『すべてのJ-POPはパクリである』インタビュー(前編)

「ポップスには種も仕掛けもある」マキタスポーツが語る“ヒット曲の法則”

――マキタさんがそのような目線で楽曲を分析し始めたきっかけは?
マキタ:小さいころより、そういう聴き方をしていたからかもしれません。歌詞よりも曲、アレンジを聞いて、レコードのジャケットに書いてある作曲家や編曲者を覚えたりしていたんです。聴きながら、「作った人は、『ここの展開だったら、メジャーからマイナーに転調して、印象をガラっと変えたい』って意図があるのかな」とか考えていました。

 コードの響きに関しても、コードがわからない時代からも、なんとなく色味とかで考えていて。曲を聴いていて、なんとなく「色味が変わったな』って感じたりするんですよね。後から、コードがメジャーからマイナーに移行した時にそうなるんだと気づきました。

音楽を服や物と同じ様に考えている

――歌詞は全く見ない?

マキタ:歌詞は最後に見る派なんですよ。興味がないわけではなくて、基本的に詞ではなく曲を聴くところから始まるというわけです。で、引っかかりのある言葉と、全体的な、コード進行とかの感じがピタっと合っていると思うような曲だと感じたときに、そこで初めて詞を見るんですよね。その詞が曲と連動したものになっていると、コード進行やコーラス、アレンジ面という総合評価的に「なんかすごい良い感じ」って思えます。

 自分はギターしか弾けないけど、弾いているときに「あ、なるほどな」って思うようなことは何度もありました。悲しいことをマイナー調で歌うよりも、明るいメジャー調のコード進行にして、メロディも明るめだけど、歌ってることが悲しい方が、なんかすごくいいなって思ったんです。そういう構造的なとらえ方を、おのずとしていたんでしょうね。

ーーあくまで興味から先に生まれたと。

マキタ:印象論って、分析する人からすると真っ先に嫌われるんですけど、僕は、最初の印象が一番大事だと思うんですよ。「何故この曲が自分にとってかっこいいのか?」って思った瞬間、最初にそのインパクトをキャッチした瞬間が重要ではないでしょうか。

ーー構造だけでなく、印象を分析するという面があるのですね。

マキタ:そうですね。「印象を分析する」というのを、僕は手立てとしてやっているのかもしれません。僕は、音楽を服や物と同じ様に考えていますし。

 ファッションで例えると、複数のアイテムを重ねてトータルコーディネートするように、音楽を全体的にスタイリングして作られているのがポップスなんじゃないかという考え方が、僕の中でもともとあったんですよね。

 例えば、ハードレザーのジャケットに対して、下はどういうものを合わせるのかと考えたとしますよね。インナーにアウター、パンツまでハードレザーにしてしまうと、それは特殊な人になってしまうじゃないですか。だから他のアイテム、要素を使わなくちゃいけない。これは日本のヒット曲でも同じことがいえます。前半は凄くハードな感じの曲調なのに、サビになると急にみんなが歌えるような、甘いメロディになるものが多い。L'Arc-en-Cielがその代表例だと思うのですが、その「甘辛感」みたいなバランスが日本人の耳にちょうどいいんじゃないかなと思ったんですよね。辛いまんまで行ってしまうと、3分の2くらいのリスナーは違和感を覚えてしまうと思うんです。より多くの人を楽しませようと思うと、甘辛感がある方が、多くの人を惹き付けやすいんじゃないかなと思うんですよね。

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