スリップノットがフェス開催決定 日本における“アーティスト主導フェス”の役割とは?

 スリップノットが、今年の11月15日&16日に『KNOTFEST JAPAN 2014』を開催することを発表した。

 彼らは2012年にアメリカで同名のフェスを開催し、約5万人の観客を動員していることでも知られており、今回はそのフェスが日本に初上陸する形となった。

 今回、スリップノットが日本でフェスを開催するにあたって、恐らく参考にしたと思われるモデルケースがある。アメリカやイギリスで成功を収め、2013年に日本初上陸した、オジーオズボーン主催のフェス、『OZZFEST』だ。同フェスは昨年幕張メッセで2日間に渡って開催され、ブラック・サバスやスリップノットなど名だたるバンドの出演や、ももいろクローバーZの出演という意外性のあるブッキングで、約2万人の動員を記録するという盛り上がりを見せた。

 現在、日本の音楽シーンは「フェスブーム」と形容されるほど、各地でフェスが乱立している。だが、その中でも今回の『KNOTFEST』や『OZZFEST』と同じ様な、「アーティスト主導型かつ国内外のアーティストが共に出演するフェス」というのは、さほど多くない。

 同形態のフェスで、まず代表的なものとしてあげられるのは、『ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN FES.』だろう。ASIAN KUNG-FU GENERATIONが2003年に立ち上げた同フェスは、2005年に横浜アリーナで開催される規模にまで拡大しており、ウィーザーやアッシュ、ベン・フォールズにマニック・ストリート・プリーチャーズが出演するなど、大物のブッキングが目立っている。いっぽう、洋楽インディー好きとして知られ、自身で立ち上げたレーベルからも続々と若手バンドのリリースを手掛けている、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の洋楽インディーキュレーション的側面も、他にはない同フェスの魅力。オズマ、ハローグッバイ、メイツ・オブ・ステイトなど、良質なインディーバンドを自分たちのファンへ紹介することで、シーンを活性化させる一端を担っている。

 京都を拠点として活動するくるりが主催する「京都音楽博覧会」も、国内外のアーティストが集まるアーティスト主導のフェスだ。同フェスでは、小田和正、10-FEET、石川さゆりが、順に同じステージでパフォーマンスを披露するなどして独特のカラーを打ち出してきたほか、期間をかけて地元の文化に根差してきたことで、今や住民から愛される一大イベントにまで成長している。その上、2010年にはザ・ベンチャーズ、2012年はジェームス・イハなどが出演しており、海外アーティストの的確なブッキングという側面からも楽しむことが出来るフェスでもある。あらゆるジャンルの音楽に精通しており、ミュージシャンからもその膨大な知識量で一目置かれている、フロントマンの岸田繁が主導になって作り上げたからこそ成立したフェスといえよう。

 アーティスト主導型かつ国内外のアーティストが共演するフェスは、主催アーティストの趣味趣向が色濃く反映されており、それぞれが独自性を持っている。このようなフェスでは、くるりを観に行ったリスナーが小田和正にハマったり、アジカンを観に行ったリスナーが洋楽インディーのバンドを追いかけるようになるなど、これまで知りえなかった文化圏の音楽に触れるきっかけとなるかもしれない。

 オジーオズボーンはももクロをブッキングしたことで話題となったが、スリップノットからも彼らの趣向を反映したサプライズはあるのだろうか? 近々発表されるであろう第二弾発表を楽しみに待ちたい。
(文=編集部)

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