柴那典「ロックフェス文化論」特別編 (インタビュー後編)
「ロックのマーケットを再構築したい」鹿野 淳が新しいロックフェスで目指すものは?
全力で音楽にとって意義のあるフェスにする
――ボーマス(「THE VOC@LOiD M@STER」)や『M3』のような同人音楽の即売会とロックフェスを融合させるような試みである、と。
鹿野:そうです。去年『ニコニコ超会議』や『M3』に行ったんですけれど、同人マーケット的なものが繰り広げられていて、あそこにいた人の顔と、あの机という箱庭の上で展開されてたものに対してちょっと涙が出るぐらい感動と共感を個人的にしてしまったことがあって。あの時、これを僕はロックフェスでやりたいなと思って考えたんですね。ただ今現在はまだ、ユーザーに戸惑われている部分はあるんです。一つは、コミケに参加したりニコ生を楽しんでいる「エアーフェス」の人達が、ロックフェスに自分の音楽や、同人誌などの音楽観を持っていっても意味がないんじゃないか、バカにされるんじゃないかって思ってるっていうところもどうやらあるらしい。もう一つはライヴハウスで上を目指してる人たちが、机の上で一体何ができるんだって思われているところもある。ただ、僕はロックフェスっていうものはいろんなものをちゃんと入れていける、ひとつの砂場だと思ってるんで。これがこのフェスティバルのひとつの特色になればいいなと本気で思っているんです。このフェスの中にはあらかじめ赤字事業がいくつかあるんですけれど(笑)、「これはこのフェスの色になるはずだから」と、他のスタッフの皆さんに頭を下げてやらせてもらっている感じですね。
――今回のフェスには、さいたまスーパーアリーナで500人限定で朝まで過ごせるということが打ち出されています。このアイデアと、その実現に向けてはどういった経緯があったんでしょうか。
鹿野:ちなみに、これも赤字事業の一つで。いや、大赤字事業か(笑)。まず、野外フェスティバルではテントを建てて泊まるのが当たり前じゃないですか。でも野外よりも快適なはずの室内にそういう環境がないのはおかしいと思った。そこから始まっています。その上で、さいたまスーパーアリーナは東日本大震災の後、南相馬市の方の避難所として一時期使われていた。で、相談をしたところ「青少年条例を破らなければ大丈夫ですよ」と会場の方が言ってくださった。そこでまず20歳以下の方はお断りをすることになったわけなんですけれども。まず、さいたまスーパーアリーナの方がやりましょうと言ってくれた。これが「VIVA LA ROCK」をさいたまスーパーアリーナと一緒に作っているということの何よりの証なんですよね。そういう協力体制があることがいいフェスの条件である、とも考えています。
つまり、端的に言えば面倒くさいわけですよ、この企画は会場側にとっては。もちろん我々は近隣の方に迷惑をかけない環境を作ることを必死になってやりますけど、夜中ずっと会場に多くの人がいるのも、朝にフェスの会場から宿泊者が出て行くことにも、様々なリスクがある。だから会場側は基本的にはやりたくないはずなんですけど、いいフェスを作りたいということ、それから今僕が語ったような理屈を全て理解してくれて、さいたまスーパーアリーナさんも共有してくれたんです。だったら全力でこちらも頑張りますよという風に言ってくれて、やることにしたというのがこの「館内STAY」です。ここに関してはほんとにいろんな試行錯誤をしたんですけど、一番お客さんにとって安上がりにできるものということで、可動式のリクライニングチェアを使って、そこで皆さんに空調のある施設の中で寝てもらうことにした。そうすることで、一人2500円で宿泊が実現できた。フェスのチケット代が高いというのは我々もわかっている。だからこそホテルに泊まる代わりに安く来てもらえる施設を作ろうっていうのが主眼なもので。だから3000円以下にしようと思って、そこで今できるのがこのやり方だったという感じです。
――その館内STAYに参加する方に向けての、何らかのアトラクションはあるんでしょうか。
鹿野:はい。飲食やDJ、そして映画などを流せるスペースはあるもので、それなりのアトラクション性はあるんですけど、ただそもそもフェスを楽しんでもらえなかったら根本的におかしいので、今年に関しては深夜に時間をきめてきっちりと消灯しようと思っています。勿論、なるべく便利な環境の中でシャワーを浴びれるような部分も推奨したり提供したりできるようにしたい。それに向けて今、最終調整をしてる段階ですね。初開催なもので、まだ完成していない部分が沢山あるのですが、これだけフェスが沢山ある中で、「最初だから勘弁して」とは言えないので、全力で音楽にとって意義のあるフェスにするべく、ギリギリまで頑張ります。
(取材・文=柴那典)
■ライブ情報
『VIVA LA ROCK』
開催日:2014年5月3日(土・祝)、5月4日(日・祝)、5月5日(月・祝)
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
<5月3日出演者>
ACIDMAN / THE ORAL CIGARETTES / KANA-BOON / KEYTALK / キュウソネコカミ / くるり/ go!go!vanillas / SiM / SKA SKA CLUB / dustbox / 10-FEET / 東京スカパラダイスオーケストラ / NUBO / Northern19 / the band apart / BIGMAMA / The Flickers / BLUE ENCOUNT / MY FIRST STORY / and more
<5月4日出演者>
赤い公園 / ウカスカジー(桜井和寿&GAKU-MC) / エレファントカシマシ / 音速ライン / クリープハイプ / ゲスの極み乙女。/ SHISHAMO / スガシカオ / それでも世界が続くなら / 高橋優 / the telephones / 東京カランコロン / ドレスコーズ / パスピエ / Base Ball Bear / THE BAWDIES / UNISON SQUARE GARDEN / LAMP IN TERREN / and more
<5月5日出演者>
きのこ帝国 / サカナクション / Suck a Stew Dry / [Champagne] / SPECIAL OTHERS / cero / tacica / Czecho No Republic / Nothing's Carved In Stone / HAPPY / ハルカトミユキ / フィッシュマンズ / The fin. / plenty / BOOM BOOM SATELLITES / 星野源 / POLYSICS / 森は生きている / LEGO BIG MORL / and more
・チケット情報
スマートフォンの画面がチケットになる「Smarte+」はこちら
※クレジットカード決済となります。
チケットぴあはこちら
【Pコード】
一日券:215-700
5/3・4〜 2日券:780-718
5/4・5〜 2日券:780-720
3日券:780-719
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【Lコード】
一日券:215-700
5/3・4〜 2日券:71062
5/4・5〜 2日券:71063
3日券:71064
※チケット代のほか、各種手数料が必要になります。
『Getting Better Presents "VIVA LA ROCK PARTY"』
・VIVA LA OSAKA
開催日:2014年4月19日(土)
会場:TRIANGLE(大阪府)
OPEN & START 22:00
<出演者>
DJ:片平実(Getting Better) / 鹿野淳(MUSICA)/ w.NON, saki, 小村幸男
VJ:nao
・VIVA LA NAGOYA
開催日:2014年4月20日(日)
会場:cafe domina(愛知県)
OPEN & START 17:00 / CLOSE 22:00
<出演者>
DJ:片平実(Getting Better) / 鹿野淳(MUSICA)/ w.NOIRI, DCO, takumi, 栃沢康博
VJ:dragthink
・VIVA LA TOKYO
開催日:2014年4月26日(土)
会場:下北沢CLUB Que(東京都)
OPEN 23:30
<出演者>
Special Live:LAMP IN TERREN
DJ:片平実(Getting Better) / 鹿野淳(MUSICA) / 神啓文(Free Throw) / 西村道男(Nur.)
VJ:waY