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Netflix『クィア・アイ』はリアリティー番組への偏見を覆す 全世界に配信されたメッセージを読む

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 Netflixオリジナルのリアリティー番組『クィア・アイ』が話題だ。ちょうどこの原稿執筆時にNetflixから送られてきたプレスリリースからの文言を抜粋すると、以下のような内容である。

『クィア・アイ』は悩みを抱えて自信をなくしたイケてない人々たちを“ファブ5”の5人が大改造して魅力的に生まれ変わらせるという番組。

 補足すると、ファブ5とは、カリスマ的な人気を誇るゲイの5人組。インテリアデザイン担当のボビー、カルチャー担当のカラモ、ファッション担当のタン、料理&ワイン担当のアントニ、そして美容担当のジョナサンら、それぞれに専門分野を持つエキスパートたちが、腕をふるって彼らが”ヒーロー”と呼ぶターゲットと心を通わせながら、新たな人生の一歩を踏み出す後押しをする。もし、この情報だけで本作を見たいと思ったなら、今すぐ第1話を見るべし! きっと2~3回は涙腺がゆるみ、そこから後はビンジウォッチング一直線だろう。


 個人的なことをいえば、私はこの説明では全く心が引かれない。そもそもこうしたメイクオーバーもの、ビフォアアフターものは日本のバラエティ番組にもあるけれど、イケてる人々がイケてない人々を素敵に改造して「あげる」という感覚が、まず苦手だ。さらに言うと、私自身はリアリティー番組全般に偏見がある。多くの番組は誰がどう考えても演技・台本・やらせの類が含まれるわけで、作り手の意図が透けて、感動も驚きも誘導あるいは強いられているような気がして無心に楽しめないのだ。2000年代以降、あっという間に米テレビ業界で主流となったリアリティー番組への業界人の複雑な心境は、『バチェラー』の元スタッフが関わったドラマ『UnREAL』や、リアリティー番組に熱狂する人々への辛辣で痛烈な皮肉が込められた『アメリカン・ホラー・ストーリー:体験談』あたりに詳しいが、どちらか言えば私もそちらに気持ちが傾く。もっとも、これは何でも斜に構えて、素直に娯楽を楽しむことができない自分のようなひねくれ者の性だとも思うが、実はそうした偏見を覆す意義を見出せる点に『クィア・アイ』の真価があるだろう。

 『クィア・アイ』は2003年から2シーズン放送された『Queer Eye for the Straight Guy』、その後『Queer Eye』として3シーズンが放送された人気シリーズのリブート版。もちろん、仕事柄、そのことは知ってはいたが見たことはなかった(邦題は『クィア・アイ♂♀ゲイ5のダサ男改造計画』)。で、リブート版のシーズン1で初体験の新生ファブ5はどうだったのか? 最初のうちこそいくらかの戸惑いはあったものの、一度心を開いてしまえば、ただひたすら自分の食わず嫌いを後悔するのみといった感じだった。例えば、楽しみにしていたシーズン2が6月15日に配信されてすぐに視聴した第1話「ゲイに神のご加護を」なんて、こんなにも自分は疲れているのか⁉︎ そこまで心が弱っているのか⁉︎ と驚き、自問自答したくなるほど涙がこぼれてしまった。

 今回のヒーローは番組初の女性で、ゲイの息子がいるクリスチャンのタミー。人の世話を焼いてばかりいて、自分の幸せは後回しといったタイプだ。そんな彼女がファブ5と関わることによって、変化を遂げていくのだが、この回はリブート版『クィア・アイ』の精神を非常にわかりやすく、色濃く反映した内容になっている。


 そもそも、ファブ5の人間的な素晴らしさは、常に相手へのリスペクトがベースにある点だ。彼らは自分たちの価値観を相手に押し付けたり体現させるのではなく、まず相手を知るために観察し、よく話し合う。私はタンがご贔屓だから、いつも彼が相手の本心を引き出していくようすに感動すら覚えてうっとりするのだが、それぞれのキャラクターが自分なりのやり方でコミュニケーションを密にし、しばしば自らの体験と重ねて語るエピソードの数々に心動かされる。例えば、ゲイであることで教会から差別を受けた経験を持つボビーの告白に涙した人も多いのでは。そんな彼が今回、教会に足を踏み入れる気持ちになったきっかけの一つが、タミーとの対話によるものなのだ。

 ファブ5はヒーローの人生に変化をもたらすお手伝いをするというだけでなく、彼ら自身もまた新たな気づきがあったり、癒されたり、人生に変化が生じたりする。この双方向の関係性は、見ていて非常に気分の良いものだ。意識高い系でなくとも他者への寛容さを認識している人は多いと思うが、相手を受け入れることの重要性を伝えることが『クィア・アイ』の最大のテーマである。国籍、性別、人種、信仰、政治的信条などすべてが異なる他者に対した時、大切なのはお互いを尊重し、対話し、そしてありのままの相手を受け入れること=「受容」。混迷するトランプの時代における分断された世界で、最も大切なことは対話と受容の精神である。このメッセージ性こそが、本作の製作陣も語っているように、なぜ今リブート版を作るのか、オリジナル版との違いは何かという問いの答えでもあるだろう。

 各エピソードでは、こうした気づきがたくさんある。非常にチャレンジングだと思わされたのは、トランスジェンダーのスカイラーが登場するシーズン2の第5話「クィアに乾杯」だ。ハリウッドでLGBTQは、ある意味でトレンドのテーマとも言えるが、ファブ5にとってもまたトランスジェンダーへの理解や知識が足りなかったことを、彼らは隠したりはしない。その姿を見て、私たち視聴者は、そうだ、こうやって一つ一つ理解していけばよいのだと気づかされ、スカイラーの笑顔にこちらが励まされるような思いさえする。この回はいつにも増して重いテーマを扱っているが、今の時代に見ることができる番組の中でも、もっとも進歩的であり、大胆な内容だと思う。

      

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