松田翔太&鈴木亮平の演技が新たな“幕末史”を作る? 『西郷どん』江戸編突入で新展開
西郷吉之助(鈴木亮平)が薩摩を飛び出し、ペリー来航に揺れる江戸に到着。NHK大河ドラマ『西郷どん』は、吉之助が日本の表舞台へと駆け上がっていく新章に突入した。第9回「江戸のヒー様」では、吉之助が後に江戸幕府最後の将軍となる一橋(徳川)慶喜(松田翔太)と出会い、“異文化”に触れる中で成長を遂げていく最初の一歩が描かれた。
江戸に到着した吉之助は先んじて江戸勤めをしていた有村俊斎(高橋光臣)と大山格之助(北村有起哉)と再会を果たす。薩摩の芋侍であった2人も江戸の嗜みを覚え、吉之助と比べるとあか抜けた雰囲気に。再会を喜ぶ3人が無邪気にはしゃぐ様はまるで男子校の様で、観ているこちら側もつられて笑顔になってしまう。“男同士のじゃれ合い”を魅力的に描写してきた『西郷どん』だが、それを成立させているのも吉之助を演じる鈴木が表現する“まっすぐさ”がひとつの理由であろう。
吉之助は有村と大山に連れて行かれた旅籠屋では、女子衆が寄り添い給仕をしてくれることを知り、「こんなことのために江戸に来たわけではない」と店から出ていこうとする。そんな吉之助を引き止めたのが、かつて吉之助が身売りから救うことのできなかったふき(高梨臨)。ふきは薩摩から下関、京都へと転々としながら江戸へ流れ着いていたのだった。そんなふきをひいきにしているのが、ヒー様こと一橋慶喜。この後の幕末史の中心となる吉之助と慶喜が、こんな形で出会う史実はない。まさに大河ドラマとしての一幕が詰まった出会いのシーンだったが、異彩を放ったのが松田翔太だ。
松田は2008年のNHK大河ドラマ『篤姫』で第14代将軍・徳川家茂を演じていたが、家茂は気品と聡明さを持ち合わせた人物、いわば将軍らしい将軍であった。対して、今回の慶喜は、旅籠屋に出入りし、女たちに似顔絵を贈り、騒動が起きれば一目散にトンズラするという破天荒ぶり。ある意味、家茂とは真逆のキャラクター像を演じることになったわけだ。登場した瞬間、SNS上では「ヒー様、ぴったり過ぎ!」「遊び人なのに漂う気品」など、松田の演技を賞賛する声が相次いでいた。終盤の登場シーンでは遊び人姿とは打って変わっての“一橋慶喜”としての威厳ある姿も見せ、出演シーンはわずかながら今後への期待が大きく膨らむ演技だった。2011年の大河ドラマ『龍馬伝』では、倒幕派の薩長などを憎み、まるで悪役のように描かれるなど、作品によってそのキャラクター像が変化する慶喜。松田によって、そのどれにも勝る誰も観たことのない、新たな慶喜像を作ることになりそうだ。