松坂桃李、最期の言葉に視聴者涙 『わろてんか』藤吉の死を経てラストスパートへ

松坂桃李、『わろてんか』最後の名演

 てん(葵わかな)と藤吉(松坂桃李)は二人三脚で共に歩みを進め、北村笑店を大阪一の笑いの殿堂へと押し上げた。てんはご寮さんとして商いを支え、藤吉は席主として芸人300人を束ねる北村笑店の経営者を務めてきた。北村笑店にとっても北村家にとっても欠けてはならない存在である藤吉が、『わろてんか』(NHK総合)第17週「ずっと、わろてんか」で息を引き取る。最愛の妻・てんに向けた最期の言葉ともう一つの家族たち、一人ひとりにかけた言葉は、視聴者の涙を誘った。

 脳卒中で倒れた藤吉は、少しづつ蝕まれていく自身の体から死が近いことを察する。今際の際、側で看病するてんに藤吉は出会った頃の話を始める。「なぁ、これからもその笑顔でずっと、わろてんか?」。藤吉は、初めててんと会った時から彼女の笑顔に惹かれていた。プロポーズし藤岡家から駆け落ちする時も、「俺の嫁はんになってくれ。苦労かけるかもしれへんけど、一生笑わせたる」「一生、一緒にわろてんか?」と店の笑顔を守り続けることを誓った。互いにその言葉を口に出すことはなくても、二人には常に笑顔があった。走馬灯のようにてんとの思い出を振り返った藤吉は、最期の力を振り絞り「たった一人の女の子を笑わせたかったんや。てん、わろうてくれてありがとう。これからもずっと、わろてんか」と確かめ合う。てんは涙を流しながら「へぇ」と相槌を打ち、藤吉の胸に顔をうずめる。か細い声で最期の思いを伝える松坂桃李の眼差しと、葵わかなの流した涙は、2人が半年間以上にも渡ってそれぞれの役柄を演じ培った絆の深さを感じさせた。

2018-121-warotenka-9302
20180121-warotenka-93
2018-121-warotenka-9303
2018-121-warotenka-9304
2018-121-warotenka-9305
2018-121-warotenka-9306
20180122-warotenka-9402
20180122-warotenka-9403
20180122-warotenka-9404
previous arrow
next arrow
2018-121-warotenka-9302
20180121-warotenka-93
2018-121-warotenka-9303
2018-121-warotenka-9304
2018-121-warotenka-9305
2018-121-warotenka-9306
20180122-warotenka-9402
20180122-warotenka-9403
20180122-warotenka-9404
previous arrow
next arrow

 未来を見据えながらもそう長くない命に気づいていた藤吉は、最期に風鳥亭の面々に自身の思いを託していく。東京の寄席が勢いづく時代、「笑いの都は東京やない、大阪や」と信じ続けた藤吉は、百年以上続く芸を模索していた。文才のある万丈目(藤井隆)がネタを書き、キース(大野拓朗)、アサリ(前野朋哉)のコンビが披露する、当時では斬新だったしゃべくり万歳の完成。見たことのない万歳、時代の天下を取る確信に藤吉は涙を流す。

 いつまでも新しいネタを考えず呆れ果てたこともあった3人が、これから百年続くような万歳を生み出した。家族も同然の藤吉にとっては泣くほどに嬉しかったことだろう。風太(濱田岳)にはトキ(徳永えり)と共に北村笑店の笑いを任せる、つまりてんを支えることを託し、リリコ(広瀬アリス)には「風鳥亭の高座に上がってほしい」と本心から最初で最期の“口説き”を見せた。藤吉にとって一番に信頼できる伊能(高橋一生)には、北村笑店の役員を任せた。そして、藤吉は伊能にてんへの思いはあるのかを問う。伊能は「おてんさん以上に魅力ある人はいない」と賞賛しながらも、あくまで“同志”であることを約束する。藤吉は、自分がいなくなった後に一人になるてんの身を案じたのだろう。「自分のやりたいことのためには進むしかない」「時代の先駆者は立ち止まったらあかん」。藤吉の思いを胸に、志を同じくした者として、伊能はてんを支えるべく、北村笑店の役員を引き受けるのだった。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる