『逃げ恥』『カルテット』『あなそれ』……TBS『火曜ドラマ』軒並みヒットの理由

TBS火曜ドラマはなぜ強い?

 『あなたのことはそれほど』(TBS系)が右肩上がりの視聴率を記録し、配信数もあの『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)に匹敵する100万回超えを達成。前期熱狂的なファンを生み出した『カルテット』(TBS系)も含め、『火曜ドラマ』(22時~)は、今最も勢いのあるドラマ枠と言っていいだろう。

 しかし、『火曜ドラマ』が誕生したのは2014年4月であり、その歴史はわずか3年にすぎない。それまで『リンカーン』などのバラエティー番組を放送していた時間帯にも関わらず、なぜ短期間でトップクラスにのし上がれたのか。

多様な生き方を尊重し、正解を提示しない

 スタート当初は苦戦続きだった。火曜22時は、もともとフジテレビ(関西テレビ)とNHKがドラマを放送していたため、TBSの『火曜ドラマ』は「後発である上に3番手」の扱い。刑事、弁護士、看護師、ホテルコンシェルジュとして働く女性を描いたほか、ママ友バトルや難病モノにもトライしたが、視聴率・話題性の両面で低調に終わっていた。

 しかし、昨年1月に転機が訪れる。深田恭子主演のラブストーリー『ダメな私に恋してください』がジワジワと女性の心をつかんだことで、漫画原作+ラブストーリーという明快な“背骨”を見つけた。実際、『カルテット』以外はすべて漫画原作、『重版出来!』以外はすべてラブストーリーという明確な背骨を掲げて、視聴者のターゲティングに成功。これによって『火曜ドラマ』のファンを増やしているのは間違いない。

 ドラマの内容にも“背骨”となっているものがある。それは、「多様な生き方を尊重し、正解を提示しない」という隠れコンセプト。『逃げるは恥だが役に立つ』では、職業としての主婦、独身アラフィフ、マイノリティなどの生き方を揶揄することなく尊重していたし、『あなたのことはそれほど』でも、不倫する人と不倫される人、別れを選ぶ人と別れない人、それぞれの生き方が誇張することなく淡々と描かれていた。

 「これは良い、あれは悪い」と視聴者を誘導しない。「これが正解だ」と決めつけない。むしろ、「どちらもアリなんじゃないですか?」と軽めのエールを送るようなイメージ。『あなたのことはそれほど』というタイトルの意味が、「誰が誰に対して思っていたことか?」をあいまいにしたまま終わらせたのも、その1つだろう。不倫という善悪のハッキリしたテーマにも関わらず、「視聴者に判断をゆだねます」というムードが全編を通して貫かれていた。

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