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『PRODUCERS' THINKING “衝撃作"を成功に導いた仕掛け人たちの発想法』鼎談(前編)

藤井健太郎 × BiSHアイナ・ジ・エンド × 高根順次が語る、「好きなことで生きていくホントの方法」

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 『逃げるは恥だが役に立つ』、『この世界の片隅に』、『FAKE』など、近年、大きな話題となった作品やアーティストの仕掛け人たちへの取材を通して、“プロデュースワーク”の重要性や面白さを探っていく書籍『PRODUCERS’ THINKING “衝撃作”を成功に導いた仕掛け人たちの発想法』が、現在発売中だ。同書を執筆したのは、『フラッシュバックメモリーズ 3D』、『劇場版 BiSキャノンボール2014』、『私たちのハァハァ』などのプロデュースを手がけてきた、スペースシャワーTVプロデューサーの高根順次。リアルサウンド映画部にて、高根順次が連載してきた「映画業界のキーマン直撃!!」を体系的に再編集した記事に加え、新たに音楽業界やアート業界の仕掛け人にも取材を行い、さらに高根自身の“プロデュース論”をまとめた、エンターテイメント業界の裏側に迫る一冊となっている。リアルサウンド映画部が編集を担当し、株式会社blueprintから発行される。

 同書の発売を記念して、リアルサウンド映画部では、『水曜日のダウンタウン』などの人気テレビ番組を手がける藤井健太郎氏と、BiSHのアイナ・ジ・エンド、そして高根順次による鼎談を行った。藤井健太郎氏は、高根が自身のプロデュース作についてアドバイスをもらったりする間柄で、同著の帯には『「好きなことで、生きていく」ホントの方法はここにある。』との推薦文を寄せてくれた。一方のアイナ・ジ・エンドは、高根がMVやドキュメンタリーのプロデュースを手がける“楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバーで、一度聞いたら忘れられない琴線に触れる独特のハスキーボイスと純粋無垢なキャラクターで圧倒的人気を誇っている。

鼎談の前編では、『PRODUCERS’ THINKING』の裏テーマである「好きなことで生きる」にちなんで、それぞれの仕事観や現在のエンターテイメント業界について話し合った。(メイン写真は左から、藤井健太郎、アイナ・ジ・エンド、高根順次)

藤井「いま与えられている役割が、将来的に打席につながる一本の道」

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高根:藤井さんには、実は先日の「WACKオーディション」の時に、いくつかアイディアを出していただいたんですよ。WACK渡辺くんを交えた3人で飲んだとき、「どうやったらオーディションが面白くなるか?」って話になって、敗者復活でメンバーを太らせるとか、その場で出てきたアイデアをそのまま拝借したんです。

アイナ:そうだったんですね。あの企画、めっちゃ面白かったです! 痩せるとかならわかるけれど、太らせるって斬新ですよね。すごく盛り上がりました。

高根:で、アイナちゃんは合宿の時の様子を見て、個人的にもすごく惹かれるところがあったので、今日は来てもらいました。アイナちゃんって、あまり計算するタイプではないけれど、ちゃんと結果を出しているし、みんなに好感を持たれるじゃないですか。『PRODUCERS’ THINKING』では、戦略性を感じさせないプロデュースワークというか、計算を超えたところで起こるミラクルについても考察しているんですけれど、アイナちゃんにはそういう未知の可能性を感じるんですよね。

アイナ:わたし、そういうの全然考えていない(笑)。

高根:撮っている側として、ドキュメンタリーとして面白くするためにはどうするか、毎回四苦八苦しているんです。メンバーたちもいかにして合格するか、必死じゃないですか。そうなると、合宿所自体におかしな磁場ができてきて、ちょっとした宗教施設みたいな雰囲気になってくる。そんな中、アイナちゃんのピュアさにはすごく救われました。

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アイナ:そういう風に思っていただけて嬉しいです。わたしは本当になにも考えていないタイプで、プー・ルイさんみたいに、売れるためにどうするかとか、こんなことをすればウケるとかはわからないんですよね。考えると、わたしの場合は空回っちゃうんです。だから、渡辺さんから「MVでうんこかける」とか言われても、もうなにも考えないで全てを受け入れることにしています。カンペで「ボケて」とか言われても、なにも思いつかないから、とりあえず素直に喋ることだけを心がけていて。思い返せば、人生ずっとそんな感じだったかもしれません。わたし、ものすごく空気が読めないんですよ。子どもの頃から人とのコミュニケーションが上手くできなくて、だからこそ相手がなにを言ってほしいのかとか、なにを求められているのかとか、そういうことばかりずっと考えていたんです。でも、なにも考えずに歌ったときに、はじめて素の自分を受け入れてくれる人たちがいた。空気が読めなくても、歌は好きなように歌えるんだって気づいたんです。それからかな、あまり考えないで、ただ素直でいるようになったのは。

高根:でも、その素直さが人気に繋がっているのはたしかですよね。ファンに話を聞くと、「彼女が1番、握手会で人の顔をちゃんと覚えてくれる。ニックネームを付けてくれたりして、心からコミュニケーションをしようとしているのが伝わる」って言うんですよ。

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藤井:意識して、こういう風に上手に言わなきゃとか、サービスしなきゃって考えていないところが良いんでしょうね。そうすると、本音の部分がちゃんと見えてくる。

高根:藤井さんは、アイナちゃんみたいな天然タイプの人と、逆にすごく計算している人、ご自身の担当番組でキャスティングする時に意識していることはありますか?

藤井:やっぱり、バランスは考えます。全員が全員、達者な人を集めたとしても番組は面白くならないことが多いんです。中には失敗する人もいた方が良いし、間違えたことをする人もいた方が良い。僕は演出業がメインなんですが、番組の面白さに直結するキャスティングに関しては自分が主体となって考えることが多いですね。バラエティ番組では、プロデュースワークと演出が重なる部分もあるので、実質的にプロデューサーを兼ねることもあります。

高根:本書では、プロデューサーの仕事が一般に理解しにくい理由も説明しているのですが、どこまでがプロデューサーの仕事なのかが線引きしにくいところも、そのひとつですよね。アイナちゃんから見ると、プロデューサーが何をしている人なのか、やっぱりわかりにくいのでは? 僕がBiSHの「MONSTERS」と「本当本気」のMVのプロデュースを務めていることも、たぶん知らないでしょう。

アイナ:え、そうだったんですか!? 全然知らなかったです。

高根:これが現場の声です(笑)。でも、僕は現場では基本的に監督にすべてを任せるタイプだから、行っても大概やることがないんですよね。予算を預かって調整して、制作スタッフを決めて仕切っちゃえば、ほとんど僕の仕事は終わり。だから、「MONSTERS」の現場では、みんなが撮影している間、爆発させる車の座席を一生懸命剥がしたりしていました。座席が付いたままで爆発させると危ないっていうので。演者の方々からすれば、なんの仕事をしているのかよくわからない、「ただ突っ立っている人」というイメージだと思います。

アイナ:よくお会いするんですけど、たしかに高根さんが何をしている人なのか、ずっとわかんなかったです(笑)。BiSHが4人だった時から、一緒にお仕事させて頂いているのは知っているんですけれど。なんとなく、偉い人なんだろうなーみたいな。でも、この本を読んでようやく高根さんの仕事がわかりました。それに『百円の恋』とか『この世界の片隅に』とか、わたしが大好きな映画の話もたくさん出てくるから、親近感があってすごく読みやすかったです。

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高根:そう言ってもらえると嬉しいです。藤井さんも、自身の仕事論を書籍『悪意とこだわりの演出術』に著しています。組織にいるからこそ、フルスイングしないともったいないと言っていて、それは僕も120%同意なんですよ。だけど、現実的に考えて、組織にいながらフルスイングできる人って限られているのかなと。

藤井:会社組織としては、全員がフルスイングでは困りますからね。ちゃんと当てて手堅く成績を出してくれる人も、当然ながら必要なわけで。だけど、やっぱりホームランを打った方が楽しいし、会社だってでかい当たりを求めているわけだから、一度はそこを目指した方がいいですよね。それでダメだった時に、「俺はアベレージヒッターを目指した方がいいんだ」って気づく瞬間もあるだろうし。その時に自分の得意なこと、組織のために出来ることを考えればいい。

高根:組織論的には、冷静に考えるとそれぞれの役割があるわけですからね。

藤井:めちゃくちゃ当たり前の事ですけど、一番ダメなのは、打席が与えられていないって文句ばかり言ったり、自分の番になったときに当てれば良いんだろうって考え方で、持ち場で力を抜いている人間。たとえばディレクターの一人として番組に入った場合、その番組が当たっても外からはその人の手柄には見えないわけです。でも、その都度に自分の持ち場で結果を出して、積み重ねなければチャンスは巡ってこないんですよ。いま与えられている役割が、将来的に打席につながる一本の道であると理解していない人が意外と多いんですよね。

アイナ:すごい、そんなことを考えていらっしゃるんですね。本当にそうだと思います。

      

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