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立川シネマシティ・遠山武志の“娯楽の設計”第8回

邦画“日本語字幕つき上映”のメリットと課題ーー『シン・ゴジラ』『君の名は。』の実績から考える

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 東京は立川にある独立系シネコン、【極上爆音上映】で知られる“シネマシティ”の企画担当遠山がシネコンの仕事を紹介したり、映画館の未来を提案するこのコラム、第8回は“邦画日本語字幕版上映”について。

 いまだなにかと話題が尽きることのない『シン・ゴジラ』ですが、少し前に話題になった“日本語字幕つき上映”が大変好評でしたので、僕の働く立川シネマシティでは2016年9月24日(土)~30日(金)の1週間、アンコール上映を行うことを決定しました。1日3回上映があるうち、2回を日本語字幕つきにします。劇場サイズもケチなことはいわず、382席と302席の最大級の劇場で上映します。

 「日本映画で日本語を話しているのに日本語の字幕つき?」と疑問に思われた方もいらっしゃるでしょう。これは主に聴覚に障がいを持つ方のための上映なのです。“バリアフリー上映”と呼称されることもあります。そのため、ただ台詞を文字でなぞるだけでなく、(車の音)(着弾音 ドーン)などの効果音表示や台詞の前に話者の名前が表示されたりすることもあります。

 『シン・ゴジラ』は出演者ほぼ全員の台詞が早口言葉のスピードで話され、しかも専門用語満載であるため、すべてを正しく聴き取ることはかなり困難な作品です。このため、健聴者であっても熱心なファンが駆けつけてくださり、あの台詞は実はこの漢字だったのか、などという新しい発見もあって、ファンならば字幕版を観るべし、という空気も生まれました。これを受けての再上映というわけです。

 さて、この日本映画の日本語字幕版上映ですが、定期的に行っている劇場はまだまだ多くありません。2000年初頭くらいから上映が行われ始め、当時はフィルムでしたから、これはかなり面倒でした。大きな映画でも数本しか字幕つきフィルムは焼かれませんでしたから、この数本を全国の映画館で3日~4日上映しては別の劇場に送るという感じで順番に回していたんですね。

 現在はデジタル化されたことで、フィルムのような物理的制限はなくなり、字幕データを入れればどこの映画館でも同時に何百スクリーンでも上映できます。このためシネマシティでは現在、上映期間を1週間に延ばしています。以前は4日間しかないのだからと全上映回を字幕つきで上映していましたが、期間を延ばしたので、ついていない上映回も選択できるよう、半分を字幕つき、半分をなしで上映するスタイルにしています。そのことでトータルの上映回数は多くできました。全曜日をカバーできたので、都合もつけやすくなったのではないかと。

 設備的にはほとんどすべての映画館で上映できるにも関わらず、なぜ上映館や上映日数・回数が増えないのでしょう? 答えはシンプルです。お客さんががっつり減ってしまうからです。

 例えば最近シネマシティでは『君の名は。』の字幕つき上映を行ったのですが、その初日9月17日(土)の11:20からの回で売れたのは、382席中、約270席でした。一見「え、スゴい入ってるじゃん」と思うでしょう? ご存じの通り、現在『君の名は。』はとてつもない記録的大ヒットになっています。加えてシネマシティでは【極上音響上映】というベテラン音響家に作品に最適な音響に調整してもらった特別な上映スタイルで行っているということもあって、公開からこの日まで、平日も含め、1日のすべての上映回がほぼ満席になっていました。平日でも全回満席になのにこの日は土曜ですから、この11時の回の前の朝9時からの回、そしてそのあとの昼、夕方の回まで朝の時点で完売になっていました。

 それほどの勢いにも関わらず、この回では100席以上席が余ったのです。おそらく他の劇場へと移動されたのでしょう。この日は19:15からの回も字幕つきの上映がありましたが、こちらは開始直前までになんとか満席になりました。おそらく時間的に他の劇場に移動するのが困難だったためかと思います。この大ヒット作品にしてこの状況、他の作品ならどうなるか…推して知るべしです。

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