峯田和伸×麻生久美子×岡田惠和、夢の布陣はなぜ実現した? 河野英裕P『奇跡の人』インタビュー

『奇跡の人』プロデューサーインタビュー
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河野英裕プロデューサー

 銀杏BOYZの峯田和伸にとって連続ドラマ初主演作となる『奇跡の人』がBSプレミアムで4月24日(日)から放送される。相手役は『アイデン&ティティ』で恋人役を演じた麻生久美子、オリジナル脚本は岡田惠和と、ドラマ好き、カルチャー好きにはたまらない布陣である。この魅力的な企画を手がけたのは、日本テレビで数々の名作ドラマを手がけてきた日テレアックスオンの河野英裕プロデューサー。その河野氏を直撃した。

「障害を扱うからには真正面からひるまずにぶつかりたかった」

——河野さんがNHKで放送するドラマを作ると知って、驚きました。今回のドラマはどういう経緯でスタートしたのですか?

河野英裕プロデューサー(以下、河野):一年以上前、どうやったらみんなが興味を持ってくれる間口の広いドラマが作れるだろうと考えていたときに、ヘレン・ケラーをモチーフにしたオリジナルドラマをやってみたいと思ったんです。2014年の秋に銀河劇場で、高畑充希さん主演の『奇跡の人』を観たときに、「ああ、このお話はやっぱり面白いんだなあ」と思ったこともあり。そこで岡田惠和さんに脚本の相談をしたら、のってくれました。

——作りたい作品が出発点だった。そこでなぜ岡田さんに相談されたのでしょう?

河野:僕と岡田さんの共通項はなんといってもロックなんですね。最近は行けていませんが、飲みに行ったとしたら音楽の話ばかりです。でも、ドラマでロックをストレートに描くのは相当難しいじゃないですか。だから、『泣くな、はらちゃん』では、漫画の中からきたはらちゃんが「この世界にはメロディがある」と人間社会の素晴らしさを最初に知るきっかけになったり、劇中歌の歌詞を岡田さんに書いてもらったりして、ロックのエッセンスを底流に流していました。今回も、主人公の一択はある種ダメな男だけど、ロックの魂だけはくすぶっている。その一択が、ある母娘に惚れて守っていくというストーリーに、岡田さんはのってくれるんじゃないかなと思ったからです。

——最初からNHKでの放送を考えていたのですか?

河野:日テレのドラマは当時、土9枠と水10枠がありましたが、どちらにも当てはまらないだろうなと思っていたら、やはりうまく成立させることができませんでした。でも、どうしてもやりたかったので、NHKに企画を提出したところ、やらせてもらえることになりました。

——NHKの日曜の夜10時という、ご自身にとって初めてのドラマ枠への挑戦をどう捉えていますか?

河野:あまり気にしていません。というか、放送できるだけで「超ありがとう!」という気持ちです(笑)。同じクールで日本テレビで宮藤さん、フジテレビで野島さん、NHK総合で中園さん、大石さん、そしてNHKBSで岡田さんと、なんだか週末の連ドラの脚本家ラインナップがすごいので、逆に面白いなあと思っているくらいです。

——NHKでなければこのドラマが成立させにくかった理由を、どう分析してらっしゃいますか?

河野:障害を扱うからには真正面からひるまずにぶつかりたかったので、この企画は色んな意味で難しいと思います。例えば、台詞ひとつとっても、普通は自分の子供に対し「殺しておけばよかった」「普通の動物だったらこんなの死んでるだろう」とは言えない。でも、こういう状況設定のドラマを作るのであれば、必要な部分は描かなくてはいけないし、中途半端にやりたくなかった。かつ、単に障害を描いたドラマではなく、複合的なドラマにしたかったんです。

——NHKはそれができる場所ですか?

河野:ドラマづくりにおけるディテールへの規制が少ないことは確かです。たとえば、峯田さんが演じる主人公の一択はろくに働きもせず金がないので、画面が割れた携帯電話で音楽を聴いていますが、それはなかなかできません。あと、交通事故のシーンも制約が多い。これらは瑣末なことなので、制限があるなら違うやり方を考えればいいだけのことですが、やはり自由を感じました。あと、大きな声では言いづらいですが、作品づくりにおける数字(視聴率)の呪縛も緩やかです。もちろん、NHKも民放も観てもらわないことには意味がないので、どういうものを作ったら多くの人に観てもらえるのだろうか、という観点は絶対に必要です。でもやはり、「どんな作品が数字をとれるか」ばかりが先行して膨れて、「これを作ろう」となるより、「作りたいもの、描くべきもの」を作って、「それを見てもらう工夫をする」という考え方のほうが楽しいじゃないですか。

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