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二階堂ふみのラブシーンはなぜ心を揺さぶるのか  10代で脱いだ大物女優の系譜から考察

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 二階堂ふみの存在を筆者が初めて強く意識したのは、彼女が16歳の時。出世作となった『ヒミズ』でのことだ。鬼才・園子温にみそめられ、その才能を十二分に発揮。同作でヴェネツィア交際映画祭の最優秀新人賞、日本アカデミー賞では新人俳優賞に選出され、瞬く間に映画界の寵児として駆け上がっていった。

 その後も、園子温、中島哲也、山下敦弘らの作品に意欲的に出演を重ねる現在の活躍ぶりは、改めてここで書き記すまでもないだろう。ではなぜ二階堂ふみが、若干21歳ながら本格派女優として高い評価を得ているのか。それは、間違いなく演技の幅にある。時には、関西人でも驚くレベルの大阪弁を使いこなすオネーチャン。ある時は、極道の組長の娘としてのド派手な配役をこなし、殺人者の恋人を支える健気な中学生まで、あらゆる”顔”を演じてきた。そんな中でも、個人的に最も印象強いのは熊切和嘉監督の「私の男」での表現力である。同作では、撮影当時19歳であった二階堂ふみの濃厚かつ、妖艶なラブシーンが話題を集めた。

 作中で惹きつけられたのが、二階堂ふみが「お父さん…しよ」と語りかける一幕。実の父である浅野忠信演じる、腐野淳悟への禁断の一言は、後のラブシーンへの布石となっている。一体このシーンを違和感なく、そして視聴者に背徳感の要素を加えて伝えることができる10代の女優は、過去を遡ってもどれほどいただろうか。

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(c)2015『蜜のあわれ』製作委員会

 近年では、10代の若手女優がいわゆるラブシーンを演じる機会は減少しているように感じる。1970~80年台は日活ロマンポルノを経て、若くしてキャリアを重ねていったケースもあった。しかし、2000年代以降はソフトなラブシーンはあっても、一線級で活躍する女優が、10代で濃厚なラブシーンを演じる機会は目に見えて減っていった。各映画賞での受賞歴があるなど、高い将来性が見込まれるほど、その傾向は顕著であるように思う。

 筆者の知る限りで、10代で濃厚なラブシーン、もしくはヌードシーンを演じた大物女優達を以下に挙げたい。

工藤夕貴 「ミステリー・トレイン」18歳時
小林聡美 「転校生」17歳時
大竹しのぶ 「青春の門」18歳時
広田レオナ 「だいじょうぶマイフレンド」18歳時
秋吉久美子 「赤ちょうちん」18歳時
吉高由里子「蛇にピアス」19歳時

 中でも吉高由里子は、二階堂ふみと同じく園子温作品から飛躍を遂げている。2人のラブシーンにどんな違いがあるのか? ここからは主観も強くなるが、その点を踏まえてお付き合いいただきたい。簡潔にいえば、「蛇にピアス」での吉高由里子は受動的。「私の男」での二階堂ふみは能動的という点に凝縮できる。二階堂ふみが演じた腐野花役は、殺人、実の父への恋心という、重い枷を背負うという役柄であった。重ねてきた苦悩を昇華させるための手段として、ラブシーンが位置づけられていた。同作で見せたシーンは、知的かつ動物的というアンビバレンツな感情を想起させられた。どちらが優れているという比較論ではないが、心を揺さぶる開放されたエロチシズムという点においては、二階堂ふみに軍配が上がるように思う。

     
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