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アイドルとJホラーの“密接な関係”はどう変化してきた? 70年代〜10年代の潮流を考察

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嶋田 一
邦画
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 アイドルとホラー映画の相性が良いことはこれまでも多く論じられてきた。「演技力が見えにくい」「画として美しい」「通常とのギャップがいい」「低予算ゆえのビジネス戦略」などが理由にあがるが、それだけでは語りきれない「宿命」の歴史がある。(なお本稿での「アイドル」とは主に女性アイドルを指す)

 スターの時代が終焉に近づき、テレビ番組でタレントオーディションが相次いで開催されるようになった70年代の末、大林宣彦監督がデビュー作『HOUSE』で池上季実子や大場久美子たちを絶叫させたのがアイドルホラー映画の本格的な始まりだろう。このとき大林監督はプロモーションとして7人の18歳の出演者を週刊マガジンのグラビアに売り込んだ。映画のためにアイドルが作り出されたのだ。

 続く80年代はアイドルが黄金時代を迎え、薬師丸ひろ子の『セーラー服と機関銃』以降の角川映画のようにファンのために作られるアイドル映画が増えた。しかし90年代になるとアイドルブームは氷河期を迎え、日本映画もまた不遇にあった。その流れを変えたのが90年代末に起こった「Jホラー」ブームだ。そのさきがけとなった『女優霊』の名が予期したように、ホラーはアイドルから女優に変貌する舞台となり、『リング』シリーズの松嶋菜々子や『死国』の栗山千明、『富江』の菅野美穂らを覚醒させた。

 一時国産ホラーの勢いが減退するも、2000年代後半からアイドル戦国時代に突入し、2つの関係はまた密接になった。メジャー作では元AKB前田敦子が主演した『クロユリ団地』がヒットし、一方でももいろクローバーが白石晃士監督のフェイクドキュメンタリーホラー『シロメ』で映画初主演を果たした、などなど……こうして振り返ってみるとアイドルとホラーはもはや理屈を超えた運命共同体であるように思える。アイドルあるところにホラーあり、その逆も然り。今や劇場公開されないものも含めれば作られていない日はないと言える。

 そんなアイドルとホラーが共に飽和状態とも言われている近年、「アイドル」×「ホラー」×「フリーゲーム原作」を配信するという形がみられる。これまでもホラーゲームの映画化はあったが、劇場公開と同時にニコニコ動画で本編を有料放送することが特徴だ。2014年7月に公開された『青鬼』は、既にプレイ動画で人気を獲得していた無料ゲームを原作として、AKB48の入山杏奈が主演を務めたことで話題になり、先述の配信方法で新たな観客層を取り入れることに成功した。

 この低予算ホラーの大ヒットを皮切りに、同様の「アイドル」×「ホラー」×「フリーゲーム原作」配信の法則による映画化は一気に定番化し、生駒里奈(乃木坂46)の『コープスパーティ』や緑川百々子と倉持由香らの『デスフォレスト 恐怖の森』シリーズ、朝倉あきと武田玲奈の『ハロウィンナイトメア』シリーズなどが続いた。いずれのタイトルも怪物が主人公らに襲いかかってくるというシンプルなパニックホラーで、ニコニコ動画のコメントでツッコミを受けつつ愛されていたアメリカのB級Z級映画的な趣もあって、たしかにネット配信で観ると楽しみが増す。ホラーにとっては怯えるのと同等にツッコミも正しいリアクションだと思うし、よくよく考えてみれば元祖『HOUSE』もじっくり観るより実況鑑賞する方に適していたのではないか。

     
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