荻原梓のチャート一刀両断!
“ダサカッコイイ”イメージは現在のモーニング娘。にも有効か 新曲「Are you Happy?」を聞く
参考:2018年6月25日付週間シングルランキング(2018年6月11日~2018年6月17日・ORICON NEWS)
最新のオリコン週間シングルランキングは、モーニング娘。’18『Are you Happy?/A gonna』が114,105枚を売り上げ1位を獲得。2位にはGENERATIONS from EXILE TRIBE『F.L.Y. BOYS F.L.Y. GIRLS』、3位にはAKB48『Teacher Teacher』が続き、綺麗にEDM路線の3枚が上位を占める結果となった。
首位を記録した両A面シングルのモーニング娘。の新曲のうち、「Are you Happy?」は力強いダンスナンバーだ。冒頭の「ダッ・ダッ・ダッダッダッ」という印象的なリズムパターンがダブステップ風に変化したり、短い間に四つ打ち~8分~16分と目紛しく移り変わる。これは“ジャージークラブ”(アメリカのニュージャージー州発祥のクラブミュージックで、近年ではそれを取り入れたTrippy Turtleなどの登場により注目を集めている)を意識したと思われる作りで、その特徴の一つであるキックの強烈なアタック音がこの曲でも重要なインパクトを残している。こうした同時代の海外のサウンドを貪欲に吸収していく姿勢はハロプロのお家芸と言ってよいだろう。そしてハロプロの中でも、やはりつんく♂の作る曲にはそうした傾向が強く表れている。
例えばマーク・ロンソンの「Uptown Funk」が米国で流行りだしたとき、あの土臭く乾いたファンクサウンドをいち早くJ-POPに昇華してみせたのがモーニング娘。'15「スカッとMy Heart」(2015年作)であった。以降、それを追うようにして何曲も似たようなモノ(俗に言う“Uptown Funk歌謡”)が他のアーティストから数多く生まれたが、押し並べて「スカッとMy Heart」の咀嚼の仕方の斬新さには及ばなかったように思う。
つまり、何に目をつけるかというセンスももちろんだが、その“早さ”、そしてそれをJ-POPに組み込む“テクニック”も併せ持っているのがつんく♂という人なのだ。世界で発生している音楽的なトレンドに常にアンテナを張り巡らせ、J-POPとして作り変える。そこに彼自身のオリジナリティを付け足し、さらには日本独自のアイドル文化へと適応させることで、結果的に多くの人々を熱狂させるエンターテインメントまで持って行くその手腕には素直に脱帽というより他ない。たとえるなら“新鮮な輸入食品を使った人気和食店”といったところだろうか。