>  > 『FGO』1.5部楽曲制作秘話

『Fate/Grand Order Original Soundtrack Ⅱ』リリース記念特別企画(その3)

『Fate/Grand Order』1.5部楽曲はどのように生まれた? TYPE-MOON・芳賀敬太に聞く

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 TYPE-MOONによる人気ゲーム/伝奇活劇ビジュアルノベル『Fate/stay night』を起点にした幾多の関連シリーズの中でも、様々な時代や国をまたにかける人理継続保障機関・カルデアの活躍を壮大なスケールで描いていくスマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』。3月28日には1.5部「-Epic of Remnant-」に使用された楽曲やイベント用楽曲などを3枚組にまとめた『Fate/Grand Order Original Soundtrack II』がリリースされる。

 リアルサウンドではこれを受け、収録曲を担当したクリエイター陣に連続インタビューを企画。第1回は毛蟹とDracoVirgoが「亜種特異点Ⅳ 禁忌降臨庭園 セイレム 異端なるセイレム」のテーマソングについて第2回は北川勝利(ROUND TABLE)と宮川弾が「亜種特異点I 悪性隔絶魔境 新宿 新宿幻霊事件」についてそれぞれ語ってきたが、ラストとなる第三回は、これまでTYPE-MOONのサウンド担当として、ほとんどの同社タイトルに関わり続けているKATEこと芳賀敬太が登場。サウンドトラックの制作過程などを聞くとともに、芳賀自身の音楽性にも迫った。(編集部)

「奈須や武内の世界をいかに補強して表すか」

ーーまずは改めて、芳賀さん自身の遍歴や、TYPE-MOONの音楽を担当することになった経緯についても伺えればと思います。

芳賀敬太(以下、芳賀):TYPE-MOONの創設メンバーは武内崇、奈須きのこ、清兵衛と僕の4名なのですが、そのうち奈須以外の3人はコンパイルというゲーム会社で新卒の同期として出会いました。セクションは違いましたが、寮が同じということもあって、顔合わせから繋がりができて、親交もありました。

ーーそこから奈須さんと会うまでは、少し間があったわけですか。

芳賀:当初はそれぞれの部署で、会社の仕事をやっているだけでした。ただ、武内が同人活動を徐々にやりはじめて、そのうえで「中学校時代からの友人で、奈須という男がいるんだ」と彼から早い段階で聞いていたんです。後に、同人活動の延長線上で「奈須の才能を世に出したい、そのためにはノベルゲームという形を是非取りたい」ということになって。3人のやれることを合わせると、ノベルゲームを作るのに十分な編成だったので。

ーー芳賀さん自身は、最初の作品となった『月姫』で、音楽を使ってどういう世界観を演出しようとしたのでしょうか。

芳賀:『月姫』に関しては、具体的にこういう音楽という指示はなくて。僕に一任されていました。開発当時、コンパイル社が経営破綻してしまったこともあり、生きていくのが大変で……。機材もそこまでなかったので、音源一つと安いPCでなんとかできることを、という感じでした。

ーーハード面、ソフト面も限られているなかでどう工夫するかという状況だったんですね。会社設立を経て、商業メーカーとして『Fate/stay night』をはじめとした作品をリリースするようになって以降、TYPE-MOON作品をどのように表現していましたか?

芳賀:そこに関しては、奈須や武内の世界をいかに補強して表すか、という一点に尽きます。

ーー芳賀さんから見た奈須さん・武内さんの世界観とは?

芳賀:奈須が書く物語は基本的に突き抜けて明るいわけではなく、どこかしらダークで、全体を通して悲壮感がつきまとうものだと思っています。僕自身は一番近くにいる2人のファンのようなもので、「今度はこういうものを作る」とか「具体的にはこういうこと」と聞いて、「こいつらこんな面白いことを思いついたのか」と思うのが原動力で。毎回「こんな面白いものに音楽を付けることができるのか」とワクワクさせられています。

ーーちなみに、芳賀さん自身の音楽的なルーツってどのようなものなんですか。

芳賀:子供の頃はせいぜいテレビの音楽番組を見る程度で、高校に入ってから音楽そのものを意識し始めて。職業としてゲーム音楽の作家を目指そうと思ったのは大学生の頃、就職も迫ってきてからでした。身の回りでは音楽でやっていくんだと言って就職をしない仲間もいましたけど、僕は妙に現実的で。「給料を貰いながら音楽を作れる仕事ってなんだろう」と考えて、ゲーム会社に入ろうと思ったんです(笑)。

ーーそういう打算もあったわけですか(笑)。

芳賀:もちろん、ゲームもゲーム音楽も好きだったという大前提があってのことですよ。バンドを続けるか、ゲーム会社に入って落ち着いて作り続けるのかという2択で、後者を選んだという感じですね。

ーーちなみに、ゲーム音楽を好きになったきっかけは?

芳賀:元々ゲームが好きということもあって、音楽を意識する以前に一番聴いていたのはゲーム音楽だったんです。とはいえ、子供だった当時は「このゲームのこの曲が好き」というだけで、どなたが作っているのかまでは知りませんでしたが。特に影響を受けているのは、いわゆるRPGというジャンルがメジャーになって以降の音楽ですね。『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』を手がけたすぎやまこういちさん、植松伸夫さんの影響は間違いなくあると思います。

ーーなるほど。芳賀さんの音楽には、それらのファンタジー要素もありながら、奈須さん・武内さんのダークな世界観を補強するに値するジャンルからの影響が潜んでいるような気がします。

芳賀:ゲーム音楽と並んで好きだったのは、ハードロック・ヘビーメタルですね。そこからの影響は間違いなくあると思いますし、音楽としても形を変えて表に出てきているかもしれません。

ーーそれは確かに伝わってきますね。TYPE-MOON作品において、チームとして多くの作品を手がけてきましたが、年月が経つうちに阿吽の呼吸もできていますか。

芳賀:そうですね。『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』)に関しては大半を任せてもらっています。かつては時として激しいやり取りをしたこともありましたが(笑)。いまは、奈須や武内の求めていることは言外まで理解できますし、向こうも「芳賀ならこういうのを出してくるだろう」とわかった上でコミュニケーションを取っているので、話は早くなっていますね。『FGO』に関しても、奈須がシナリオを書いた部分はしっかりオーダーがあって、その場合は要望にあったものを作っています。

「おそらくこれが人生の代表作」

ーー今回は『FGO』のお話を中心に伺っていければと思うのですが、元々の『Fate』シリーズがあったうえで、スマートフォン向けゲームというプラットフォームに移るとなると、また音楽的な表現も変わったと思うのですが。

芳賀:『FGO』の開発に入った当初、メンバーもそれぞれスマートフォン向けゲームをやっていたんですが、サウンドに力を入れているゲームはまだあまり多くないというのが共通見解でした。最初のコンセプトは「サウンドをしっかり聴いてもらえるように」ということだったので、その時点でかなり大変なことになりそうだと覚悟していました(笑)。

ーーこれまであった市場向けにやるというより、そこに新たなものを持ち込むというスタンスだったわけですか。

芳賀:そうですね。いつも以上に力を入れようと話していました。

ーー追加でシナリオやイベントも増えたりと、現時点では明確な終わりがないのも今作の特徴ですが、そういう部分も作り手としては面白みを感じる部分だったりします?

芳賀:いや、基本的には苦しいですね(笑)。最初から終わりが決まっていれば、そこに向けて盛り上がりを作ったりできるんですよ。ただ、『FGO』に関してはそうではないので、その時々で演出をしながら、毎回「これ以上の盛り上がりが後から出てきたらどうしよう」と不安にはなります(笑)。

ーー芳賀さんが手がけるTYPE-MOON作品の音楽において、『FGO』ではどういったサウンドを作っているという感覚がありますか。作る上での特徴もあれば教えてください。

芳賀:力が一番入っている作品、といっても過言ではありません。おそらくこれが人生の代表作になるだろうとも感じています。制作については、特にゲーム内の音声に興味がある人たちはイヤフォンやヘッドフォンを使うはずなので、ミックスの際にはヘッドフォンで最終確認をするようにしています。

「Fate/Grand Order Original Soundtrack Ⅰ」発売告知CM

ーーその力の入れ具合に呼応してか、サウンドトラック第1弾『Fate/Grand Order Original Soundtrack I』は、発売初週5.5万枚の売上を記録し『第32回 日本ゴールドディスク大賞』の「アニメーション・アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。ご自身としても作っていくなかで手応えはあったのでしょうか。

芳賀:良い結果になったことはすごく嬉しいのですが、作っている間は流石にそこまで読めないので、必死で目の前のことに集中していただけですね。夢にも思わなかった賞を戴けて、ただただ感謝しています。

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