宇野昌磨、羽生結弦……平昌オリンピックフィギュアスケート出場選手の演技を彩る音楽
2月9日に開幕した『2018平昌オリンピック』。フリースタイル男子モーグル・原大智選手、スキージャンプ女子・高梨沙羅選手、ノルディックスキー複合個人ノーマルヒル・渡部暁斗選手が銅メダル、スピードスケート女子1500m・高木美帆選手、スノーボード・平野歩夢選手が銀メダルを獲得するなど、日本人選手の活躍も目立つ。
そんな中でも注目が集まるのが、やはりフィギュアスケートだろう。テレビ東京に出演した、団体ソチ五輪フィギュアスケート代表・町田樹によるスケーター目線の率直で明確な解説も話題だが、特に2月16日、17日にそれぞれ行われる男子ショートプログラム、男子フリーには、羽生結弦選手が右足首の怪我から復帰後初出場するとあり、大いに盛り上がりそうだ。そこで今回は、選手一人一人に寄り添って、その演技を彩る音楽に注目したい。
フィギュアスケート団体戦ショートプログラムでは、ペアの須崎海羽、木原龍一組が「Yuri on ICE」を使用。同楽曲はアニメ『ユーリ!!! on ICE』(テレビ朝日系)で主人公・勝生勇利がフリースケーティングで使用しており、勇利はこの曲に乗せて、何度もストーリーの重要なキーとなる滑りを見せてきた。柔らかいピアノの音色、徐々に盛り上がりを見せる切実なメロディは透明感があり、同時にどことなく色気も感じさせる。『ユーリ!!! on ICE』のオープニング映像を彷彿とさせる、二人のシンクロした繊細なダンスに加え、会場を大きく使った大胆な動き、ペアならではの華やかなリフト。その振りと音楽の盛り上がりはしっかりとマッチしていた。
また、五輪初演技ですでに団体戦に出場した宇野昌磨選手がショートプログラムで使用するのは、ヴィヴァルディ「冬」。ストリングスの激しいメロディに合わせ、4回転トーループ+3回転トーループや3アクセルといった難度の高い技を力強く見せていたのが印象的だった。楽曲が激しさを増すに連れ、宇野選手の演技もより勢いづいていく。終盤で見せる美しいスピンをオーケストラによる楽曲が彩っているようだ。
さらに、宇野選手はフリーでは歌劇『トゥーランドット』より「誰も寝てはならぬ」に乗せて演技を披露する。同楽曲はこれまで、荒川静香選手が『2006年トリノオリンピック』で使用するなど、様々な選手に愛されてきた。テンポはゆったりとしているが、クライマックスに向けて熱量を増す歌声が印象的だ。宇野選手は過去にも同楽曲を使ってきたが、オリンピックの舞台でどんな演技を見せてくれるのか、楽しみにしておきたい。
そして羽生選手はフリーで映画『陰陽師』の「SEIMEI」、ショートでショパンの「バラード第1番ト短調」を使用。和風な衣装も印象的な「SEIMEI」は、オーケストラやピアノによって演奏されるフィギュア定番の楽曲とは大きく異なり、和太鼓や和笛の音色が響く。2015〜2016年に同楽曲に乗せ、難易度の高い技を次々と披露した羽生は、優美な表情を見せて数々の観客、視聴者を虜にした。
一方「バラード第1番ト短調」は2014〜2015年にも使用していた楽曲。過去の演技では、シンプルで静かな出だしから徐々に複雑さ、深みを増していくメロディに乗せて軽々と妖精のように飛ぶ姿を見せてくれた。怪我による2カ月のブランクを経て挑む、今回のオリンピック。「やるべきことをこなしてきたし、これ以上ないことをしてきたので、何も不安要素はないです」という羽生の言葉を信じ、さらなる進化を見せてくれることを期待したい。
他にも宮原知子選手は映画『SAYURI』、歌劇『蝶々夫人』の楽曲、坂本花織選手は「月光」、映画『アメリ』の楽曲、田中刑事選手は「ザ・プロフェット」、「フェデリコ・フェリーニメドレー」をそれぞれ使用する(前曲はSP、後曲はFS)。振り付けと楽曲がどうシンクロしているのか、曲の盛り上がりと演技がどうマッチしているのかなどにも目を向け、各選手の演技を見守りたい。
(文=村上夏菜)