KinKi Kids「Topaz Love」は彼らにしか歌えない歌だ デュエットソングの新境地に溢れる“らしさ”

 2018年2月5日付のオリコン週間CDシングルランキングの1位はKinKi Kidsの『Topaz Love/DESTINY』。デビューから39作連続で首位を獲得した。今回はそのうち、「Topaz Love」の方に注目したい。

 「Topaz Love」は哀愁漂うラブソングで、KinKi Kidsらしさを再確認できるシングルと言ってよいだろう。とくにサウンドにおいてはイントロからストリングスの存在感が印象的だ。ストリングスアレンジは堂島孝平とsugarbeansの二人が、そしてその演奏を星野源のサポートメンバーとして注目されている岡村美央のチームが担当。寂しさと温かさの同居した、そして何処となく物語が始まる直前のような期待感のあるフレーズが奏でられている。全体に渡ってもこの弦の響きが曲の世界観の土台となっていて、主旋律を殺すことなく引き立て役に徹している。

 また、2番Aメロで単音三つを繰り返すピアノの美しいアルペジオは、その部分の<水の中 潜ったような 静寂へと難破したあたし>といった歌詞における主人公の孤独(言うまでもなく、耳の治療で入院した昨年の堂本剛の状況そのものだ)と詩的な情景とを見事に表現しているだろう。歌詞の世界観を言葉だけでなく音でも楽しめる箇所である。2サビを終えるとストリングスとギターの両楽器が“シンクロ”する約10秒間と、その後の多重コーラスによってラブソングとしては最も幸せな瞬間が訪れる。さらにこの曲をKinKi Kids二人の歌として聴くのであれば、剛の復帰後のリリースという意味でも彼ら自身の物語性に接近し得る非常に重要な場面だと言っていい。クライマックスへと向けた単なる橋渡しではなく、彼ら自身のストーリーを重ねることで深みを増す瞬間だろう。非常に“音楽的”に詩情を感じ取ることができる曲なのだ。

 このように演奏陣のパフォーマンスも光る作品であるが、もちろん作詞と作曲を担当した剛と光一の才能も充分に感じ取れるものとなっている。ファン人気の高い「愛のかたまり」などと同様に、剛作詞による一人称が<あたし>というジェンダー交差した歌詞は寂しさや儚さを醸し出すのに一役買っているだろう。「硝子の少年」でデビューした彼らが今でも「トパーズ」や「宝石」をモチーフとした歌詞を歌っているのも感慨深い。<ネオン>という表現もどこか彼ららしく思える(筆者は彼らに“な行”のイメージを強く持っている)。そしてどんな言葉も柔らかなニュアンスに変えることのできる独特の歌唱法を見るにつけ、KinKi Kidsは男性ボーカルの新たなスタイルを確立したグループなのだと改めて実感した。多様化している男性アイドルシーンでも、こうした彼らの独特の佇まいは異彩を放っている。

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