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『木村拓哉という生き方』著者インタビュー

木村拓哉はなぜプレーヤーであり続ける? 社会学者 太田省一氏が解説する“本質的な魅力”

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 『中居正広という生き方』の著者であり、リアルサウンドで『ジャニーズとテレビ史』を連載している社会学者の太田省一氏が、9月29日に『木村拓哉という生き方』を上梓した。同書は、CDデビューする以前に出演した舞台に始まり、ブームを作ったドラマ、そしてバラエティやラジオ、音楽……約30年にも及ぶキャリアを紐とき、木村拓哉の生き様に迫った一冊。今回、太田氏にインタビューを行ない、改めて木村拓哉という人が私たちにとって、どんな存在なのかを語ってもらった。(佐藤結衣)

木村拓哉という“存在”

太田省一『木村拓哉という生き方』(青弓社)

ーー今、木村さんについての本を書かれた理由から聞かせてください。

太田:芸能界の歴史、ひいては私たちが生きている平成という時代を振り返る上でも、木村さんは決して欠かすことのできないひとりです。しかし、あまりにもその存在が当たり前になりすぎて、あるいは偏った見方によって木村さんがどんな人なのかを顧みることは、これまでほとんどなかったように思います。2016年の年末に惜しまれながらもSMAPが解散しました。そのタイミングで、改めてSMAPの魅力に気づいた人も多くいたことでしょう。今こそ、木村さんがどんな方なのかをじっくり考えたい、そう思ったのがきっかけです。

ーー実際に多くの作品を振り返ってみて、最初に感じたことは?

太田:書き始めてまず“なるほど”と思ったのは、木村さんがプレーヤーというポジションにこだわり続けている点です。キャリアを重ねていく中で、演出やプロデュースといった、ひとつ上の視点で作品に携わる形もある中で、演じたり、歌ったり、自分の言葉で話したり……そうしたプレーヤーであり続けようとしている。その姿は、木村さんの独特なスタイルだと思います。

ーー『プロフェッショナル 仕事の流儀 SMAPスペシャル完全版』で木村さんが「(プロフェッショナルとは)前線から逃げない人。最前線から……」と語っていたのを思い出しました。

太田:木村さんは、どの場面においても“素”の部分を練り込ませているんですよね。この本では、木村さんのことを「素の多面体」という言葉で表現させていただきました。普段、私たちは「キムタクってスターだよね」とか「木村拓哉はアイドル中のアイドルだ」などと、“スター”と“アイドル”の使い分けを意識せずに話しています。そこをあえてこだわってみると、スターが到底真似できないような存在なのに対して、アイドルはファンに寄り添う存在なのではないかと思うんです。なかでも、SMAPは歌って踊るだけではなく、コントやフリートークをすることで、より身近なアイドル像を切り拓いたグループでした。遠いスターと近いアイドル。厳密に言えば、矛盾するものを、木村拓哉という人は両立させてしまった。既存の概念を超えて、場面によってどちらにでもなりうる存在。そこに私たちはある意味で幻惑されるというか、木村拓哉という唯一無二の魅力を感じているのでしょう。

木村拓哉を求めた平成という“時代”

ーー木村さんがスターになる背景には、昭和から平成へと大きな時代の変化があったと書かれていました。時代が木村さんに求めたものとは何だったのでしょうか。

太田:「みんなで頑張ろう」というのが昭和という時代だったとすれば、平成は「一人ひとりが、もう一度自分の生き方を見つめ直そう」とした時代。そのモデルとなったのが、木村さんだと思います。昭和の日本は、戦後から高度経済成長、そしてバブルにかけて平均的な豊かさを、みんなで作りあげていきました。テレビでは“お笑いビッグ3”のタモリさん、ビートたけしさん、明石家さんまさんが登場した頃。当時は、みんながある程度贅沢をしていた時代です。さんまさんの高級車を惜しげもなく破壊するなんていう企画も放送され、世の中全体にお祭りムードが漂っていたように記憶しています。しかし、バブルの崩壊とともにその日々が突然終わりを告げたんです。幸せになるためには一生懸命勉強して、いい大学に入って、大きな企業に就職して、終身雇用で一生安泰……それまで誰もが疑わなかったレールは壊れ、どうしたらいいのかわからなくなってしまった、というのが平成の幕開けでした。

――人々が生きる方向性を見失った時に出てきたのがSMAPであり、木村拓哉だった、と。

太田:木村さんは1972年生まれの団塊ジュニア世代。就職の際に不況の波をまともに受けた最初の世代でもあります。この本の中でドラマ『若者のすべて』(フジテレビ系/1994年)の話を最後の章にしたのは、まさに当時の日本の若者たちをテーマにしたドラマだったからです。ドラマで演じるキャラクターではありますが、木村さんを見て多くの若者が憧れを抱きました。自分たちと同じように情けない部分もありながら、それでも頑張って理想を貫こうとしている。そんなキャラクターに、自身を投影して共感したのでしょう。

――木村さんが出演されたドラマを鑑賞すると、“この職業を選んだ木村拓哉”というパラレルワールドを見ているような気分になります。

太田:検事の木村拓哉、美容師の木村拓哉、ピアニストの木村拓哉、武士の木村拓哉……その人生を選択した木村拓哉ならどう生きたか、を示しているのが彼のドラマや映画での姿。役になりきるのではなく、演技をするときに必ずそこに自分を入れる。木村さんのドラマを楽しむ重要なポイントです。

      

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