ゲスの極み乙女。は常に変化し続ける 『達磨林檎』以降のモード見せた野音ライブを振り返る

ゲスの極み乙女。は常に変化し続ける

 ゲスの極み乙女。が、全国ワンマンツアー 『丸三角ゲス』のファイナル公演を、9月3日に日比谷野外大音楽堂で行った。アルバム『達磨林檎』を携えて行われたこの日は、その収録曲を中心に、既存の曲も大胆にアレンジすることでライブ全体のトーンを統一、現在進行形で変わっていくバンドのモードを強く印象付ける公演となった。

 まず登場から観客の意表を突く展開を見せる。突如会場後方に現れた川谷絵音、休日課長、ちゃんMARI、ほな・いこかの4人。ヘッドセットマイクをつけた彼らは観客の間をぬって前方のお立ち台まで移動。そのままトラックが流れ始め、新曲「あなたには負けない」がスタートする。4人それぞれがお立ち台の上で、<あなたには負けない>の歌詞にあわせ、右手と左手を交互に前に突き出す振り付けを繰り返す。4人とも黒い衣装で統一しており、どこかただならぬムードが漂うなか、ほな・いこかの「えのぴょん、しっかりしてね♡」という台詞で、曲が締め括られた。

 川谷といこかがデュエットを響かせた「シアワセ林檎」、80年代風のシンセの音色が印象的な「影ソング」などが続きながらも、前半のひとつのハイライトとなったのが「crying march」「某東京」「午後のハイファイ」と続いたパートではないだろうか。<死に物狂いで生き急いでんだ>(「ロマンスがありあまる」)という歌詞がぴったりくるような、めくるめく性急感、緊張感とともにライブが展開されていった。『達磨林檎』収録曲では、川谷の他に、いこか、そしてささみお&えつこという二人のコーラス隊も、かなりの活躍を見せている。その様々な声によって、ライブにおいても入れ替わり立ち替わり歌の主役が変わっていくような演劇的な側面が強調されているのだ。この混声の使い方が、他のバンドには決して真似できない、今のゲスの極み乙女。のオリジナリティを生んでいる。

 前半の最後に演奏されたのはネオソウル風の「Dancer in the Dancer」。落ち着いたピアノの音色と、物憂げな川谷のラップが丁寧に絡み合い、サビではキャッチーな歌が広がる。その後「いけないダンスダンスダンス」のトラックが流れ、一度6人がステージから退場する。8分以上あるこの曲でライブは一時休憩となったが、後半になると白い衣装に着替えたささみお&えつこが登場し、ステージの中央で向かい合って交互に歌い上げる。その光景には、まるで舞台を見ているような感覚にさせられた。


 「いけないダンス」で水色を基調とした衣装でステージに戻ってきた4人。曲中にはささみおがバイオリンを披露した。さらに続く「DARUMASAN」ではステージの中央に6人が並び、仮面を付けながら踊り、タイトルにちなみ「ダルマさんが転んだ」をはじめる一幕も。予定調和に陥らない、ライブの至るところに“驚き”を散りばめているところも、ゲスの極み乙女。のライブの楽しみのひとつだ。

 『達磨林檎』収録曲を中心とした前半。“ダンス”をタイトルに含む楽曲が並んだ中盤。そして後半はこれまでのキャリアを駆け抜けるようなナンバーが続いた。しかし、たとえば「ドレスを脱げ」といったバンド初期の楽曲も、この日のライブでは今のバンドのモードで再構築していく。さらにえつこが前方に出てきて川谷のギターを弾くサプライズも。大事な部分を誰にも任せることができるのは、ゲスの極み乙女。のチームワークの良さが故だろう。その後は「星降る夜に花束を」「だけど僕は」を演奏し、本編は「キラーボール」で終了した。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる